1章 異世界でも人と喋れない 〜その5〜







....とりあえず、1度雑貨屋マーリンの店主にお金を返して、そこから宿みたいなもの探すか。






店に着いてドアを開け、店主に金貨6枚を渡した。


「ちゃんとツケを払ってくれたね」


お釣りは銀貨が5枚....多分日本円で考えて金貨が1枚1000円として、銀貨が100円、銅貨が10円のような役割を果たしていると思うが......


エンに直すと金貨が1枚1000エン、銀貨が100エン、銅貨が10エンという感じか。


なぜ、1エンがないのか....


いや、まだ俺の知らない通貨があるのかもしれないな......


「君ぐらいだよ、すぐに返してくれた人は。大体、1週間くらいツケにして、後でまとめて払っていくのが、普通なのだが......」


1週間もツケのままで食って寝てをやっている人なんているのか....


いや、まとめて払うのがこの世界の普通なのか?


まぁそんな事、俺には出来ないな......


紙も欲しいが、とりあえず外で奥義を使いやすくするようにバインダーを買いたかった。ついでにそれを入れるバッグも。


商品を持って、お金と一緒にマーリンさんの前に出した。


「....あぁ、すまない。雑貨屋は、18:00までなんだ。まぁ、特別にそれは売ってあげるよ。2階で酒屋もやっていてね......」


そうだったんだ。


....確かに少し騒がしいと思ったが、宴会でもやってるのか?


「....まだ何か用が?」


あぁ、そうだ。この人に、どこに宿屋があるか聞こうか。


紙は、節約して、一応余っているポスターを回収してきたからそれに書いて......


「そのポスターのショーを観に行ったの!?」


ポスターを出した瞬間、いきなり大声で話してきたから、心臓が....


マジでびっくりした......


「あぁー、ごめん。そのマジックショー、実は——」


その時、見覚えのある声が聞こえてきた。


「ただいま!!マーリン」


「おかえりなさい、貴方」


......へ?ガルさん?


「ん?誰だ....って、君は!さっきの!」


いや、さっきの言うなよ。まぁ、名前言ってないからしょうがないのか。


「貴方、知り合いの人なの?」


「あぁ、ちょっと色々あって、マジックショーの助太刀をしてくれたんだ」


いや、無理やり押されて芸をやっただけなんだが......


「そんなことが....貴方、やっぱり私がいなきゃ、出来ないんじゃない」


「それは....いや、言い訳は出来ん。私が悪い。緊張し過ぎて、誰かに助けを求めようとしたら....この人がいてな。芸をして、私を助けてくれたのだよ」


いや、別に助けてないけど。


「....君が、私の旦那を助けてくれたのね。ありがとう」


どうしよう。勘違いが......


「いや、この人は人と喋れないんだ......」


ナイスフォローだ!ガルさん!


「....やっぱり?昼の時も紙に『ありがとうございます』って......」


その紙を見せてきた....


「....確かにこの人の字だ。......マーリン、この人と何があったんだ?」


「....倒れていたから瞬間移動を使って、ここまで運んだだけよ。そして、左足の方に魔物に怪我を負わされていているのを知ったわ。....あそこまで酷くなるまでなんで放っといたの?魔物討伐には、ポーションがないと死ぬに決まってるじゃない!」


「....ちょっと落ち着いて、マーリン。この人にも何か事情が......」


俺は、ポスターの裏に説明を書き始めた。

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