第15話 丸焦げの川魚と狼の毛皮


 彼女はパチパチと何かが弾ける音で目が覚めた。寝惚けた視線の先には、ゆらりと燃える焚き火があった。


 辺りはもう暗闇、森の中は夜を好む生き物の声が聞こえる。


 節々が痛いのは地面に寝ていからだろう、悲鳴に近い声を出しながら起き上がった。


 「目が覚めた?良かった」


 茂みから薪を両手いっぱいに抱えながら出てきたレアは、焚き火の近くに薪を置くと細長い枝を一本焚き火に投げ入れた。


 ばつの悪そうな顔をするセナは頬を膨らませる

 「ごめんなさい・・・」


 レアは調達してきた川魚を串に刺し、焚き火に当てると、いくつか枯れ枝をくべて火力を上げた。


 「少し怪我してたけど、アレッサが治療してくれたから跡もないはずだよ」


 セナも太めの長い枯れ枝を選ぶと、2つに折ろうとしたがびくともしないので、そのまま焚き火に投げ入れた。火の粉と灰が巻き上がり、火の勢いが弱まる。


 「あなたは助けに来てくれた、悪いのは私だもん・・・」


 セナは抱えた膝を強く抱き締めた。そしてもうもう一度「ごめんなさい」と言った。


 そんな彼女の所に、ぷぷがトコトコと歩みよる。


 「お腹が痛いの?あッ分かった、お腹が空いたんだね、ちょっと待っててね、もう少しで焼けるから」


 ぷぷは魚が焦げないように、小さな手で串をクルクルと器用に回す。


 とても器用なぷぷの姿を見たセナは隣に座り「こう?」と焼き方を教わる。


 そんな一人と一匹を眺めているレアの顔は笑顔だった、が気にしていたのはセナの後ろにある茂みの先だった


 (アレッサ、追跡してる?)

 『はい、目標は南西500mでこちらの動きを監視しています』

 (やっぱり、しつこいね)


 「はいッ! あんたの分」


 突然、目の前にこんがり良い感じに焼けた川魚を差し出された。ぷぷの教え方が良かったのかと思ったが、背中に隠した左手には丸焦げの魚が見えた。ぷぷは自分の分を美味しそうに食べている。


 「あ、ありがとう」


 食べた感想を聞きたいのか、横目でチラチラと彼をみる。


 レアは一口食べると「凄く美味しい」と目を輝かせた。


 それを聞いたセナは頬を紅くして小さな声で「なら良かった」と言うと、丸焦げの魚を食べた。


 食事を終えて、少し安心したのか、焚き火の程よい温もりが眠気を誘ったのか、セナはまた寝てしまった。


 焚き火の炎が無くなり、炭火だけになった。


 辺りの暗闇が増える。


 「ぷぷ」


 セナの腕の中で寝ていたぷぷは、うっすらと目を開けた。


 「ああ、お土産は狼の毛皮で良いよ、朝方はかなり冷えるからね」


 また目を閉じて丸くなった。


 「了解」ため息混じりに答えるレア


 『目標、接近してきます、距離200m』


 瞳が赤く光だす。


 右手には刀『雷』が握られていた。


 次の瞬間、彼の姿は消えていた。


 ☆


 朝霧が辺りを覆う肌寒さを感じる朝


 眠るセナの体には、ロックウルフの極上の毛皮が掛けられていた。

 


☆後書き☆


 初めて三人称視点で書いてみました。なってます? 

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