第13話 ロックウルフの森


 「アレッサ 位置は!」


 「はい 北西500m」


 そのまま、そこに居て


 森の中を銃を構えながら駆け抜ける


 「ロックウルフに気付かれました、2手に別れ 彼女の方とこちら向かってます」


 こっちにも気付いて足止めするきだね


 ゴーグルをセットする


 「アレッサ、一気に駆け抜けるよ」


ーーーー今より1時間前


 「この森は面倒なヤツがいるからやめようよ」


 「なに?怖いの?あなた強いんだから大丈夫でしょ それにこの森を抜けた方がロレンスの町へ近道になるって、案内してくれた人も言っていたじゃない」


 その案内してくれた人は最後に危ないからほとんどの人は通らないよって、肝心な部分をぷぷと遊んでいて聞かず来てしまったのは君じゃないか

 

 「アレッサ 状況は?」

 「今のところ、彼らのテリトリーは避けて移動出来ています」

 よし、アレッサの誘導があれば無事に森を抜けられそうだ。


 この森はロックウルフ達が住んでいる

 ロックウルフは外見は狼に似ている、その狂暴な性格からは想像も出来ないような集団的な狩りを行う。名前の由来通り一度ターゲットにされると、森を抜けるまで彼らから狙われ続る。普通の人なら一晩と持たずに彼らの餌食になってしまう。


 そして、この森にはもう1つ珍しい物がある。

 

 それは転送石だ


 この石は見た目は何処にでもある普通の石だがある一定の衝撃を与えると、与えた者を別の何処かに転送してしまうという、ここにしかない珍しい石がある。


 この石は加工すると、転送する距離 場所をある程度指定することが出来る品物になる。とても便利な品物の為、この森に石を探しにくる者も多いが、ロックウルフのテリトリーに有るために手に入れることが大変困難で、市場にはほとんど出回らない。それこそ軍隊規模の捜索でやっと手に入れることが出来る品物だ。


 この森に入る前に、その事も話して不用意に石を踏んだり触らないでとセナには言っている。

 たとえロックウルフ達に襲われても、ボクがいれば何とかなるけど、万が一に転送石でセナだけ飛ばされたら、彼女だけでこの森を抜けることは絶対に出来ない


 ボクが先頭を歩いて、彼女はボクが歩いた後を歩く

 ぷぷと楽しげにお喋りしながら、リラックスモードの彼女だった。


 「アハハハハ それは大変ね」

 「そうさ レアはたまにボケッとしてるとこあるから ボクがいないと大変なことになるんだ アレッサは石頭で融通がきかないところあるし ぷぷ」


 ぷぷのヤツ、言いたい放題言ってくれちゃって


 このまま進めば明日には森を抜けれそうかな、最初はどうなるか心配だったけど、何とかなりそうだ

 後の楽しそうな会話で、ボクの警戒心も少し和らいでいた。


 


 「そっちはダメッ!」

 突然、後のぷぷから大きな声が聞こえた。


 咄嗟に振り返ると、彼女がボクの後ろから外れ近くに咲いていた花を触ろうとしていた。


 ーーーッ!まずい!


 遅かった、彼女の右足は小さな石を踏んでいた


 彼女を掴もうと伸ばした手は、彼女の体をすり抜けてしまった。


 ーーーーー消えた。


 「うわっ! 彼女って本当にすごい ねぇレア 彼女は凄い才能の持ち主だよ ぷぷ」


 ぷぷが訳のわからない事を言って喜んでいる、今はそんなこと構っていられない。


 「アレッサ! トレースして」


 「発見しました ここから北北東2キロの位置にいます」


 「『アックス』召喚、索敵範囲を彼女の周囲5キロに設定 急ぐよ、彼らに気付かれる前に合流しなきゃ」


 素早く『アックス』に弾を装填し、駆け出した。


 ☆


 

 ロックウルフ達ののリーダー『サム』の鼻がピクッっと動く、感じる僅かな人間の匂いを嗅ぎとった。


 新鮮な雌肉の匂いだ、久しぶりの臭い雄肉以外の肉。


 ウォオオオオオオオン


 茂みから、声を聞き付けた仲間達が次々と集まってきた。


 「狩りだ!」

 『サム』の大きな声が、仲間達の闘争本能に火を着け、一斉に駆け出して行った。


  ☆


 ポツンっと独り、さっきまでの風景と全く違う場所にいる自分に困惑するセナ


 「転送・・・」


 まさか、信じたくない一心でレアとぷぷの姿を探すが、見付かるはずもなかった。


 そこに、遠くで遠吠えが聞こえた。


 この森に入る前にレアから言われた注意事項

 石に触らない、レアが歩いた跡を歩く、もし万が一、はぐれたら絶対に動かない


 わ、わかったわよ


 動かないでいてあげるから・・・早く助けに来なさいよね


 セナは大きな木を背にして震える体を押さえ付けるように丸くなった。


 


 

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