第6話 まだまだすれ違う二人と、追う者


 「あら、おはようレア君 どうしたの?今日は早いわね」

 「お姉さんッ! 豚猫!豚猫ある?」

 「なっ!? なにっ!?急に」

 「ある?残ってる?ないの?うわああああ 遅かったああああ」

 「ちょッ!ちょっと落ち着いて!」


 「なるほどね、バネットさんにそんな事言われたか、で、しばらく大きな依頼を休んで、簡単な依頼を沢山のやろうって考えた訳ね」

 「うん・・」

 「こっちとしては、レア君の腕は超一流だし誰も引き受けないような大きな依頼を受けて貰って助かってたけど、そうよね、安全第一よね、ごめんなさい気付けなくって、待ってて!直ぐに調べるから」

 「ぷぷッ!仕事は出来るけど恋愛は上手くいってないよね、昨日彼氏と喧嘩したみたいだけど、早く謝った方が良いよ あれはキミが悪いよ 待ち合わせ場所間違えるは、彼氏と間違えて違う人に声かけるは、そりゃ彼氏も怒るよ この間も ほら ぷッ!?」

 キーボード叩いていたお姉さんの手が、気持ち良さそうに話していたぷぷの長い耳を鷲掴みした。

 「ぷぷちゃん・・・・それ以上言ったら、毛皮にして売り飛ばすわよ」

 「「ごめんなさいッ! 」」

         ・

         ・

 「あったわよ! 豚猫の肉と毛皮の納品依頼、数は肉が20頭 毛皮が10枚ね、これにする?」

 「はい! それでお願いします」

 「了解、手続きしとくね それと過剰に狩らないとこ! ぷぷちゃん 分かった?」

 「分かってるよ ぷぷッ!」

 ぷぷはまたシャドーボクシングを始め、やる気満々だ。

 「レア君の実力なら問題ないと思うけど、一応気付けてね、行ってらっしゃい」

 「ありがとうございます! 行っていきます」

         ・

         ・


 レア達を見送ると、自分の席に座った。

 ふぅ ぷぷちゃんどこで見てたのかしら? 恥ずかしいなぁ もう って言うかワタシは悪くないから謝るもんですか あっちが謝って来るべきよ。 

 ん? ディスプレイを眺めていると気になる依頼を見付けた。 

 人探しの依頼?うぁ 報酬1000ログ!?高過ぎでしょう。それに凄い可愛い女の子ね 身なりからして高貴な家の娘さんかしら どうせ親と喧嘩して家出でもしたんでしょ レア君にこっち紹介した方が良かったかしら・・・・帰ってきたら教えてあげますか

         ☆

 窓から昼の日差しがベットに射し込む


 「眩しい・・」

 

 モゾモゾとベットの上で日差しの当たらない場所を探しているうちに目が覚めてきた。


 日差しの高さからすると昼頃かしら・・まだ寝足りない


 ゆっくりと体を起こし背伸びをするが、体のあちこちの筋肉が悲鳴をあげる


 ーーーーーーーーーッ!


 ようやく泊まることが出来たこの宿だが、改めて部屋を見るとお世辞にも綺麗とは言えない。鍵が壊れているドア、古びたベットに何故か真新しいシーツ 足の高さが揃っていない1人用のテーブル、部屋を仕切る薄い板はどれもかなり傷んでいるため隙間だらけだ、シャワーとトイレはもちろんなかった。


 ・・うら若き乙女が1人で泊まるようなとこじゃないわね


 そういえば昨日の夜に隣が煩かったけど、静かね・・居ないのかしら?

 そんなことしたらダメと分かっていても覗いてしまうのが人の心理よね。少し屈むと見やすい穴があったので息を殺しながら覗き込む、何が出てくるか分からない恐怖が心臓の鼓動を速くする。


 「覗いたって誰もいやしないよッ!」


 キャーーーーーーーーーーッ!


 「なんだいその声は煩いね、近所迷惑だよ」


 驚いて飛び上がった後に腰を抜かして床に座り込んでしまった。


 声の方に目を向けると、部屋のドアが開けられ昨日の夜中、受け付けにいたマダムがいた。


 ノックしてえええええええええ!


 「わ、わたしは決しての、覗いてたわけでは! 」

 「それを覗きって言わないなら、世の中のスケベな男達が泣いて喜ぶだろうね」

 「・・・・そうですね、ごめんなさい」

 「まぁいいさ、お腹減ってるだ?サンドイッチ持ってきたから食べな」

 こんな状況で「はい、いただきます」なんて言えるわけないです・・

 「今食べたくないなら、後で食べな、ここに置いとくからね」

 テーブルの上に置かれた皿が落ちそうになったので慌てて抑えた。

 「このテーブルも修理に出さなきゃダメだね、食べたら皿は下に持ってきな」

 「は、はい」

 マダムの階段を降りていく音が次第に小さくなり、また部屋が静かになった。


 ぷっ!あはははは ビックリした 普通ノックするでしょ 勝手に客室を開けるなんて信じられない あはははは でも行く宛のない私を泊めてくれて、サンドイッチまで・・・・

 笑ったらお腹空いちゃった! いただきます。 美味しいいいいい。


        ☆


 「この村で降りたんだな?」

 「あの村で降りたのはあの子だけでしたし、身なりが普通でなかったのでよく覚えてます」

 「嘘じゃないだろうな?」

 「ほ、本当ですよ! 夕方頃に着いたのであの村に泊まってるはずですよ」

 将校らしき男は部下に耳打ちした。

 「すぐ部隊に連絡して調べさせろ」

 「あの・・・・見付かったら報酬の1000ログ貰えるんですよね?」

 「今の話、誰かに言ったか?」

 「いいえ、誰にも」

 銃を抜くと引き金を引いた、その動作に一瞬の躊躇いもなかった。


 将校の腕章にはガリア連邦のマークが印されていた。


 ☆後書き☆


 受付のお姉さん、名前は美咲さん 23歳 現在彼氏と喧嘩中 性格は優しくて、面倒見もよくて美人さん 赤毛の長いストレートをサイドテールにしてるのがよく似合うね  彼氏と仲直りできるように応援してあげてね。ぷぷッ!

 

 


 

 


 

 

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