第5話 セナの才能


 「お帰りレア」

 ベットから飛び上がると、そのまま宙を浮いてレアの肩に降りた

 クリっとした大きな目、体のわりに大きな耳、尻尾は長くフワフワ、動物に例えるならフェネックに似ている。


 「はい、これ、ぷぷの分」

 体よりも大きな肉巻きナムールを小さな手で大事そうに抱き締める。


 「アグベアーは討伐してきて報酬も貰ったんだけど借金でほとんど無くなちゃった」ベットに倒れ込む。

 「だいたい見てたよ、また次の依頼を受けたら良いさ、今度はボクも行くからもっと報酬の良いのを受けよう!1万ログぐらいのをさ ぷぷッ!」

 1万ログか・・・そんな依頼見たことないけど 戦争の傭兵でそれくらい稼いでる人がいるって聞いたことある。今の世界情勢について詳しくは分からないけど、今いるこの小さな国がなんだか騒がしいのは分かる。アレッサに聞けばもっと詳しい情報を教えてくれるけど、傭兵なんてやるつもりもないから聞いても仕方ない。もし戦争になったら巻き込まれないうちに逃げよう。

 「大きな依頼はちょっと休憩して、今度は安全な小さな依頼を沢山のやってみない?例えば、豚猫フットキャットの討伐とか」

 『豚猫の討伐 報酬は10ログです』

 「良いねぇ 豚猫!あいつらボクを見ると敵対心丸出しで睨んでくるんだ、この際、生息数を減らして絶滅種にしてやろう ぷぷッ」シャドウボクシングをやりはじめてやる気満々だ。

 ぷぷって、カワイイ顔して時々おっかない発言するからな、でもぷぷもやる気だし、明日、組合のお姉さんに相談してみよう。

 「よーし! 明日に備えて夕飯だ」


         ☆

 

 宿の呼び鈴が鳴る。

 バネットは調理場から受付に視線をやった。


 明らかにこの村に相応しくない服装と顔立ち、高貴な家の娘だと分かった。


 「なんの用だい?あんたみたいな者が泊まるような所じゃないよ、他所へ行な」

 「みんなそう言って断られたわ、お金ならあるの1晩でいいから、泊まらせて」

 歩き疲れた表情を長い金髪で隠していたが、見ればわかる、それに少し怪我もしているようだった。

 

 「・・・面倒事は御免だよ、それと文句を言ったら追い出すからね、2階の奥の部屋を使いな」

 「ありがとう・・・」


 バネットは重そうな足取りで階段を登って行く後ろ姿を見た。

 何か強い意思を持った目をしていたねぇ 駆け落ち?にしてはまだ若すぎるし、危ない揉め事ってわけでもなさげだね となると家出?どうせ親と喧嘩でもしたんだろう ワタシも若い頃はよく親と喧嘩して家出したもんだ。2、3日もすれば冷静になって家へ帰るだろう、それまで面倒みてやるか。少ししたらサンドイッチでも持っていくかね。だめだねぇ、歳を取るとどうも面倒見が良くなっちまって、年なんて取りたくないねぇ。


                ☆

 セナは部屋に入るなりベットに倒れ込んだ。


 ・・・足が棒でもう動けないわ、なにも考え無しに飛び出すとこうなるのね、教訓だわ。

 お腹が減ったけど、もうベットから動く体力も残ってない


 コラッ!ボクのお肉返せ

 もう、ボクのお腹のなかでお亡くなりになりました ぷぷッ

 か・え・せ!

 んごごごごッ 口が裂けるぅぅぅ


 ・・・・隣が煩い 

 ん?どこかで聞いたような声・・・、ダメ・・・眠すぎて思い出せないーーーー

 

 セナの薄れ行く意識のなか、隣から聞こえてくる声が気になりつつ意識を失った。


 へぇ、この子、僕達と繋がったんだね え?どういうことか説明しろ?こんな簡単な事、ゴブリンだって分かるよ あれ?怒った?ごめんごめん 怒りっぽいと彼女出来ないよ え?大きなお世話?では、世話好きなボクが教えてあげるよ 彼女がこれから背負う運命がある 彼女はまだその事を分からないけど、感じ取っている そんな人は普通いない もはや彼女だけの才能だね だから探してるんだ 探し物が何か分からないけど探してるんだ それが何かは もうキミだって分かるだろ ぷぷッ! 面白くなりそうじゃないか ぷぷッ!


 

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