第3話 また貧乏になりました


 「凄いッ! 本当にアグベアー討伐しちゃったんだね! これは報酬の600ログです」


 ここは冒険者や野良兵士などが仕事を受ける、国直轄のハローワーク組合だ。


 「やったああああああああ! これだけあれば2ヶ月は生活出来るよ、ありがとうございます」


 ご褒美を待つ犬の気持ちが良く分かるね


 ん?お姉さん早くちょうだい


 「なりますが・・・宿泊している宿主のバネットさんから連絡があってね、滞納している宿泊費と食費合わせて200ログを天引きするように言われてるの」


 さ、さすがバネットさん抜け目がない。でもまだ400ログあるし!


 「それと、村長さんから、この間、壊した橋の修理代300ログの請求も来てるの」

 「は、はい」あれはボクじゃないんだけどなぁ・・・

 「あっ! 今月は組合の更新月だから20ログ貰うね」

 「・・・はい」

 「それだけかな・・・あっ!事務手数料で5ログもだね、細かくてごめんね」

 「いえ・・・・・・・」

 「残りは75ログかな」

 「75ログ・・・・」


 あんなにお金が入って太っていた袋が、ペチャンコになってしまった。

 

 うぅ・・・お姉さんが悪魔にみえてしまう。


 「ほ、ほらレア君、腕は超一流だし可愛いし優しいし、また大きな依頼来たらお願いするから元気だして、ねっ!」


 「ありがとうございます」


 いくぶん不貞腐れた感じを残し返事をした。

 ダメだよ、お姉さんのせいじゃ無いのにこんな態度したらダメ!気を取り直して笑顔で元気な声を出した。


 「何かあったらまたお願いします!何でもしますから」

 「うん!必ずお願いするね」


 組合をでると、大通沿いに並んだ屋台から食欲をそそる匂いが漂ってきた。


 何か買って帰りたいけど無駄遣いしたら75ログなんてあっという間に無くなって、また断食するはめに・・・それだけは避けたいなぁ


 「アレッサ、75ログを1週間持たせるには?」


 『1週間朝昼晩食べた場合、1食1ログ48パル ナムールのジャム無し  朝晩の場合 1食3ログ バルク定食飲み物なし  晩のみの場合 1食5ログ あさひな亭 竹定食飲み物有り 』


 あさひな亭 竹定食・・・食べてみたい、でも5ログは高いよね、でも食べたい、いやいや我慢しよう、でも食べたい、食べたい食べたい、お腹が減りすぎ食べ物の事しか考えられない。


 とりあえず、屋台で売っている肉巻きナムール買おう!買ってしまえ!買うべきなんだ!


 「お兄さん、肉巻きナムール1個! 」

 「あいよっ! 毎度有り! 」

 そうだ❪ぷぷ❩の分も買っていってあげよう

 「お兄さんもう一個追加して」

 「毎度有り!2個で6ログな」

 6ログ・・・2日分か 今は考えないでおこう、もう食べなきゃ死んじゃうよ

 「はいよ!肉巻きナムール2個」

 「いただきまーす」

 噛んだ瞬間に柔らかい肉からタップリの肉汁が口の中いっぱいに溢れる。その肉汁を噛みごたえのあるナムールの薄い生地が吸収し旨味がアップだよ

 ・・・美味しいよぉぉ、生きてて良かった 何回か食べたことあったけど、今回のが一番美味しい気がするぅ。

 顔がだらしなく弛くなる。

 『欠食時間記録更新しました、3日と10時間46分ぶりの食事ですね、おめでとうございます』

 「アッ、アレッサッ!」もう! ゆっくり食べようと思ったのに! 回りの人たちが笑ってるじゃないか! 紅くなった顔を肉巻きナムールで隠しながら足早にその場を後にした。

         ☆

 屋台の前にあるバス停に、首都からセナを乗せたバスが到着したのは、レムがいなくなって直ぐだった。

 「へぇー、なかなか良い村ね」

 なんの根拠もなくこのバスに飛び乗ったけど、とりあえずここから始めるわよ。

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