2019/07/12 15:38/鷦鷯飛蝗

雨が降っている

しかし僕の視界は快晴、容赦ない日差しに照らされて、息も絶え絶えに坂を登っている

確かに雨は降っているのだ、この場所に

誰も傘を差していないのは僕の視界が晴れているからで

だが雨は降っているのだ


彼らの上に雨は降っている

もちろん僕の上にも降っている

しかし僕の目には晴れ空しか映らない


この乖離は何によって生まれていて

どのような影響をなにに及ぼしているのか、わからないのだが、食い違っている

食い違っていることが確かであり、雨はやまない

僕を濡らせない雨が

僕の知覚を濡らせない雨が何もかも押し流して

僕だけを取り残す

何もなくなった旱の中で

僕の体は雨水に溺れているはずなのだが

いかんせん空は晴れている


灼け出されている

なんのことはないと

いつか見限って

どこかに置いてきたものたちがそこらを流されて

それだって見えやしない

嗅げも触れもしはしない

なにもわからないまま歩き続ける

足が重い

僕の知覚を濡らせない雨も体力は根刮ぎ削り取る

旱のせいではなくて、気付けないあの雨が

僕から何もかも奪い流していく雨が

何もかもを為している

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