西脇晴美は、今日も健全に人を殺したい

nagai misturu

第1話

ある日のこと、西脇晴美は酒に酔って帰宅し、湯船につかること30分、ご機嫌に小唄を口ずさんでいると、自分の口から悪魔の声が出ていることに気付いた。


その声は低く長い吐息のようであったが、どちらかというと晴美を取り巻く空気をひとつの波形に変える何かであった。


晴美は、口から出るこの悪魔の声を聞きながら、人に優しくしたい、善き人でありたいという欲望と同じくらい、自分は飼い慣らさなくてはいけないものが自分の中にあると自覚した瞬間だった。

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