第6話 子供

 ある日、産婦人科に行ったとき、医者に呼び止められた。


 それは、彼女に乳癌があるとのことだった。


 彼と彼女は、かなり驚いた。


 そして、医者に告知された。


 「――はっきり言います。出産を諦めて抗がん剤治療をするか、抗がん剤治療はせずに、出産をするか。もし、出産を選びますと命の保証は出来ません」


 彼女の表情が曇った。手も震えている。彼はその震えている手にそっと手のひらをのせる。大丈夫だと言うように。


 

 彼女は寝込んだ。もう何も考えたくないのだろう。それもそのはず、産まれた子供の成長を見れないし、感じれないのだから。


 どっちを決断するか。彼は彼女に生きてほしいと望んでいた。でも、彼女は自分の命を犠牲にして子供を産むことを決断した。



 §



 子供が産まれた。女の子だ。名前は彼女の名前の一文字をもらってつけた。


 彼女は死んだ。



 葬式の参列で両親が号泣していた。


 彼も無我夢中で泣いた。泣き崩れた。

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