結婚

第5話 両親

 蒸し暑い夏。青年は彼女と結婚するために、高校進学を考えていた。


 だが、施設はそれを許さなかった。理由としては、青年が非行にはしり、ルールが守れなかったので、施設がこれ以上、青年を在住させることを認めなかったからだ。


 一晩中考え、他の施設に移ることではなく、働くことを決断した。


 「――世の中はうまくいかないな」



 §



 青年は中学を卒業して、工場に就職した。


 家は、彼女が高校に通うために、親が借りた賃貸に居候さしてもらっている。


 毎日彼女と愛をつむぎ、幸せな毎日を過ごしていた。


 青年は十八になった。


 彼女と結婚するために、彼女の親に挨拶に行った。


 「――出ていけ!!」


 両親は青年を許さなかった。中卒で、親もいない青年を……。


 「お願いします」土下座して、許しを問う。


 「とりあえず、帰ってもらえませんか?」母親が言った。とりあえずと。



 青年と彼女は、もう夜の色が染まってしまっている帰り道を、とぼとぼと歩く。



 後日、彼女の電話に着信があった。親からだ。


 内容は、結婚を許すということだった。


 青年は歓喜した。



 §



 一年後、彼女に子供が出来た。



 

 


 

 

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