オメガバースのドラマチックな人生に憧れたβの話

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第1話

前世の記憶を思い出したのは中学生の時。




これで魔法のある世界やら、謎の中世風やら、乙女ゲームの世界とかだったらあらやだ転生しちゃった。とかテンションあがるけど普通にすごく普通に自分が記憶してた現代だった。




特にチートとか知ってる知識を有効活用とかそんな関係もなく。


普通の世界観だった。




クッこれで前世とかいいだしたら、ただの拗らせた人だわ。




でも神はいた。




オメガバースが存在する世界だった。まじかきたこれ。




漫画や小説ではよくお世話になりました。




いま生きている世界ではごく当たり前として受け入れられている性別数だけど


前の生の記憶では『オメガバース』とはあくまで設定であり創作上のものだった。




運命の番を盛り上げるロマンスや運命に引き裂かれる悲恋とかそんなドラマチックな人生歩めるかも!?とわくてか検査の受けたけどふつうにβだった。もう一度検査結果をみたけどやっぱりβだった。




……クッ圧倒的モブ感つらい




絶対的絆で惹かれる運命や番の特別感に憧れ、夢見てしまったせいで悲しさ倍増である。無常。






ときに幼馴染の二人がαとΩでいるんですよ。べたなことに。ある意味テンプレートなことに。


これまた二人とも別嬪さんで名家出身の上流階級。うってかわって私はいたって平凡な一般家庭の出である。


どうしてα又はΩの可能性を信じていたのか。いまとなっては恥ずかしい。


せやな。貴重な性は特に見目がいいし、いいとこの出がデフォだよね。読んだことある。完全に黒歴史。


というかよくこの二人と幼馴染でいられたな私。






まだ記憶が戻る前の、オメガバースなんてまだ意識しなかった幼い頃。


三人で遊ぶとナチュラルに二人がお互いを優先していたことがあった。


仲間はずれとかじゃなくて、例えば名前を呼ばれる順とか、何かを渡す時の順とか本当に些細なこと。




無意識内で決められた順位があるなって気づいてしまった時は胸がぐあーってなった。


今だからこの環境でαΩなら惹かれあうだろうし、好きな人が優先的になるのは当たり前だよね。と、納得してるけど当時はどちらも『二番目』なことが、ただ寂しくてちょっと泣いた。




そんなどことない疎外感を克服し、大好きな幼馴染達なのは変わらない。


思春期を迎えても、どちらかに片思いするなんてこともなく過ごせたのは私にとってとても幸運なことだったと思う。


でも、こう。あつらえたかのような特別な二人が。




美しく夢のような物語のようで、羨ましかった。




たぶん将来的に番うんだろうなぁって思ってたので、恋人なりました報告を楽しみにしてた。




まぁ私は圧倒的モブだもんな。


仕方ないな。


脇役としてドラマチックな二人を見守ろう








そんな高校2年の夏休み


幼馴染の一人、αのハルが


青ざめながら告げた言葉はまさに青天の霹靂だった。








「みぃに、つがいが、できた」

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