第4話 祭
この奇妙な村にも夏祭りがありました。普通の夏祭りは野外で行われることが多いかもしれませんが、この村では公民館で祭りが行われました。住民たちは小さな旗を持って、公民館の中の椅子に座っていました。何が始まるのでしょう。私はワクワクしておりました。私はこの村に来るまで祭りに参加したことがありませんでした。外から花火の凄まじい音や盆踊りの歌が聞こえる中、私は黙々と勉強していました。もしかしたら周りが遊んでいるときに勉強していることが親に分かったら褒めてもらえるかもしれん、と思ったのです。しかし親は黙々と勉強したいる私を見ても何も言いませんでした。けれど私を気味悪がっているように感じました。この子は勉強依存症なのかしら、と。世にこんな病気があるか分かりませんが、もしあれば多くの親は喜ぶでしょう。しかし私の親の場合は別でした。知識欲とかクラスで一番になりたいから勉強しているのではなくて何が別の目的で勉強していることが親には分かったのでしょう。さて、そんな思い出話はさておき、村の祭りについてお話しましょう。
祭りは八月末の涼しい夜に行われました。
この村には街頭が無いので夜道を歩くのは困難でした。なんとこの村では松明とか蝋燭、提灯しか無いのです。この村は江戸時代とか大正時代くらいのままなのかと思いました。やっとのことで公民館に着きますと、中には村人が所狭しと並んで座っていました。私は公民館の隅の席をあてがわれました。一緒に来た初老の男性は隣に座りました。
しばらくすると、司会者の男が出てきました。彼によると、もうそろそろ祭りが始まるから準備せよとのことでした。初老の男性は私に小さな旗をくれました。旗には何かのマークが施されていました。
司会の男が幕の中に引っ込むと、別の男と女が出できました。彼らは座っている村人達に一礼して歌を歌い始めました。そうすると村人達は異様に興奮し始めました。小さな公民館に破れんばかりの大きな声援が響きました。私は普段感情を表に出さない彼らの変貌ぶりに心底驚きました。皆狂ったように口角を上げたり、叫んだり、感動したのか大泣きしているのです!私はこの光景を見て海外の伝説的なスターのコンサート映像を連想しました。ファンが感動のあまり次々に失神する映像です。あれに似たことが公民館でも起きていました。次第に私も熱狂に巻き込めれてしまいました。気づけば夢中になって旗を振り、歓声を上げていました。村人達との一体感がとても気持ち良かったことを覚えています。そして興奮が絶頂に達したところで私は卒倒してしまったので、後の記憶はありません。目が覚めたら、居候している小屋の一室に寝かされてました。昨日の祭りは夢だったのか?と思いましたけれど、私の枕の横にはあの小さな旗が置いてありました。
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