第5話 暮らし(下)

 この家での食事は居間でするけれど、テレビは消すのが決まりだ。


 お父さん曰く、

「食事の時は何かをしながらじゃなく、食べることを楽しもう」

 らしい。


 話をするのは有り。

 めいめいがその日にあった事を話しながら、聞きながらの夕食は確かに楽しそうだ。


「今日のキュウリはウチの畑で採れた分よー」

 お母さんが嬉しそうに話している。

「このちょっと曲がってるのがいいよね」

 慧さんがニコニコしながら、うんうん、と相槌を打つ。

「キュウリはこのツブツブがハッキリわかるのが新鮮の証だからねぇ」

 お父さんが大きく頷く。


 庭にある小さな畑で作られる野菜は形こそ不格好だが、陽の光をいっぱいに浴びて生命が溢れんばかりだ。


 ここに来てから僕は一度目の脱皮をした。


 明日は水換えをしようとお父さんが話している。

 汲んで一日置いた水の用意はできているらしい。

「出来ればもう少し大きめの入れ物に移してやりたいなぁ」

 お父さんが僕の方を見ながら言った。


 僕は嬉しくなって流木の上に登ってハサミを振って見せた。

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