第8話霊道トンネル2


私、村松 連庵が、屏風にトンネルの絵を描いたのには理由があった。

それは、三年前に亡くなった妻をそのトンネルから呼び出して、癌を患った我が 短き命の中で、死後に妻の魂と極楽に行くために描く物であった。

ある都市伝説で、紙に大きな黒く塗り潰したマルを描いて、その横に長方形を描き亡くなった人の名前をそこに書くと、その黒く塗り潰されたマルが穴になり、霊界と繋がり、話すことができるとのことであった。

それを屏風にかえて、トンネルにして試したのだ。

「おーい」

屏風に向けて声をかけた。だが、返事がない。普通なら、仕方ない単なる伝説として諦める所だが、

私は、何度となく屏風に声をかけた。

何度となく、異常な行動に家族でさえ変人扱いしていた。

そんなときだ、霊道トンネルから妻の声が聞こえた。そして、妻は私の目の前に現れて、「待ってましたよ」と、笑顔で私の手を差し出した。

その手を掴むとふわりと体が浮かび、そのまま霊道トンネルの中に入っていった。

そうなのだ、いつの間にか、寿命は尽きていたのだ。

ただ、霊道トンネルに入るときに見た私の顔は、満足そうに笑顔であった。

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