第7話霊道トンネル


長く続くトンネルの中を、静かに何も考えず歩いている。

傍らには、白装束のお婆さんがおり、提灯持ちながら先導してくれているのだ。

「もしもしお婆さん、ここはどこだい?」

「はぃ~、ここはあの世とこの世の境にある、霊道トンネルでございます。」

お婆さんはかすれた声で、自分がいる場所を教えてくれたのだが、僕は死んだ記憶はなく、少し戸惑っていた。

「霊道トンネル?僕は死んだのかい、」

お 婆さんに直に聞くことにした、何故なら、何も考えずしていると、足がお婆さんの跡について、前へ前へと歩いてしまう。

「いやいや、まだ死んではおらんよ、あんたさんは、屏風の前で死にかけていたからね」

お婆さんの屏風に、何か記憶が呼び覚ました。

そうだ、呪われた屏風を確かめに、世界的に有名な画家(村松 連庵 )の家に来て、(村松)が死ぬ直前、痛み無くあの世に逝けるようにと描いた(霊道トンネル)は、表には一度として出していなかった。

(村松)が描き終えたと同時に、彼は屏風の前で、安らかな顔をして亡くなっており、手には遺書が握りしめられ、この(霊道トンネルの屏風)だけは、誰にも見せず片付けてほしいと書いてあり、 そのまま五十年の年月が過ぎて、彼の孫に金を渡し、何とか調べることができた。

そうだ僕は死んでなんかない、ただ、屏風を見せてもらっているだけだったはず、

『お婆さんは屏風の魔物で、僕をあの世に連れていこうとしているのだ』

考えていると、僕はこのままでは連れていかれると思い、お婆さんを突飛ばし

「ギャッ」と倒れかけると、ダッシュで来た道を戻った。

お婆さんは、「そっちはならん、地獄が待っとるぞ」と言うが、聞く耳もたない。

やっと、光が見えて外に出た。私の意識が戻ったと同時に、背中が痛く体が動かない、息も苦しくたまらない。

何かが、背中に刺さっているのだ。でも何故刺されているのか?

向こうで物音がする。見るとマスクを被り、箪笥を探っている者がいた。

空巣であった。僕はそのどちらかに背中をナイフかなにかで刺されたのだろう。

本当に苦しくてたまらない、血も流れているのにしぶとく生きている。

早く殺して、痛くないように早く早く・・・「お婆さんごめんなさい」・・・


意識が遠くなったとき、最後に出た言葉は、お婆さんへの謝罪であった。

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