第3章「新緑」

この会は多士済々であったが、わたしの知る範囲では伊藤努が、生命化学の話題ではなく、韓国の教会事情であったり、南米の解放の神学について弱者の論理を展開したりそうかと思えば東山俊はパーティで遊びほうけ、弱者ではなく若さを謳歌する。それはたとえばデスコにガールフレンドと云ったり酒を飲んだり、間違っても経営学を学ぶ意欲はあるようには思えなかった。彼は、進学校の高校の出身で勉強の要領は熟知していたのであるがオールAと云う秀才ではなく上位と中堅の間という成績と云うべきであるのに飛び級で卒業したいなど大言壮語と云うべきであり若さが出たなと思える。佐藤新一は輪の中心にいるように振舞い自分は何でも知っている友人の事は掌握したかのように話すのであった。私は成績では中堅の上と云ったところでパイロットとかコクヨのような会社に就職したいと思って居た。無論私には望外の会社ではあった。他の友人の志望と比べれば地味で有っても文房具は廃れないと思った。これと云った特技はなくとも哀愁とペーソスが滲み出るような普通の青年は先輩に同期の学生に愛された。ほかの学生の様に自分の志望の会社を目指しているのはみなと同じであった。カトリックについては、小さな者虐げられたものを開放するのが、一番大事で虐げられたものを自由にするのがイエス様の行動と思想の根幹であるというと時田先生は、大いに褒めてくれた。「私はまだ助教授なのにこの小僧はキョウジュとはなんだと思って居たが俺も教育者きみも若枝の様に育ってほしいものだ」。進路に暗雲が有るとすれば私が佐藤新一と仲良くできるかあの話題の中心にいるというジエスチャアに我慢できるか俺は騙されないぞと思うのだった。全ては会長になるためであり超有力企業に就職する手口におもえてならなかった。

しかし新一は策士でそれがあいつの性格なのだと思えば、世の中広い。彼も若枝なのだと思えば、腹は立たない。そんなことより彼女は作るまい。学業以外は一気に燃えるような純愛はしない。勉学に励むという態度が揺らぎ始めてきた。なぜ僕だけ無味乾燥の世界に放置されるのだ。先輩のNさんに話すとなんだ君の悩みはそんなことか「酒を飲みたまえ」。

と云う単純すぎる返答であった。」

だが今にして思えば酒は大敵、健康を害する源であった。いくら飲んでも酔うことが出来ない由紀子の事を思うと何もかも持っていこうという新一、何もない私、キョウジュの綽名は誰がつけたというのは問題とならず、わたしを冷やかすような[勉強しかできないのか]と云う冷笑されているように思えてならなかった。この会は男女の交際の会となっている。もちろんその大元は新一の一存がおおきく作用しているのは確かであった。

キリスト教は、小さき者、弱き者のためにある筈だと時田先生に言うと、「最初は、この会もそういう会であった。しかし2%の富んでいる者が98%の弱者を支配する構造になってしまった。これはわしには不条理に思える。

聖書はそういう不条理を打破するためにあり、この本によれば数々の預言者が警告を発しそれを世の中の人は退け続けた結果神の一独り子が救世主として人類の歴史に介入された。それがイエス様でその一点を信じぬく限り救いは小さき者弱き者に訪れるとわしは信じている。君も、キリスト者は小さき者、弱き者のためにあると思うなら会長に立候補してみたらどうかね」。とすら言われた。しかし私の思うにあの新一がいる限り正常な選挙が行われるはずがないと私は思うのであった。それはOBとの接触S賛助会との結びつきを公平の名のもとに分け合うことなどあろうはずがない。わたしの能力の範囲外である。入学時に何故私の出身高校がこの大学で芳しくないのか「孤独」になるからである。わたしの目標は会長になることではなく卒業して文房具の大手の会社に入社することであった。彼女を作るのは、それからでも遅くないとあらためて決意するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る