第461話 閑話~神出(かみいずる)場所では…(1)

 神々が、天照に呼び出されて居た。

 本来なら出雲の国(出雲大社)で神在月(10月)に招集される筈が、普通日(何でもない日)に呼び出しを食らうのは珍しい事。

 だからこそ「ヤラかした」と思ってない面々が「ヤリ遂げた」と「褒めて貰える」ものだとばかりに、ホクホク顔で互いに顔を合わせて嬉しそうにしている。


「やあ、君も呼ばれたんだね?」

阿遅高日子根神あじすきたかひこのかみもか?」

「まあ建築関係と製造関係だろうね」

武御雷たけみかづち(車製造などに関わる神)どの…」


「・・・揃いましたね・・・」


 その言葉に反応したのは、今回の招集で初お目見えとなった武御雷。


「天照大御神様、本日はお招き頂き有難きしあわ「…そうか反省部屋へ行くのが、それほど幸せだと思えるのだな?」

「「「・・・・・・は・・・?」」」異口同音


「阿遅高日子根神、天目一箇神あめのまひとつのかみ、武御雷…

 貴方たち、自分が忘れたとは言わせないわよ?」

阿遅「えっと」

天目「その」

武御「彼の世界に異世界こちらの技術を送り込んだ事を褒めて頂けるのでは?」

天照「何故、褒められると思ってるの?いくら何でもアレはヤリ過ぎよ」

阿遅「ですがっ…良太殿は喜んでおられましたでしょう?!」

天照「何処までもお目出たいひとたちね。

   では、その良太さんから『有難う』の声は届きましたか?」

阿遅「あ」天目「あれ?」武御「…有りませんでしたな」

天照「感謝の言葉が届かぬのに何故、褒められると断言し、

   此処に居るのか不思議ですけれど。貴方たちは罰を与えねばなりません」

天目「ば、ば、罰に御座いますか?!」

武御「わ、私は良太殿の負担を減らしたく、

   異世界あちらへ技術を送っただけにございますっ」

天照「で?送った技術とやらは異世界の職人が使えますの?」

阿「使え」天目「ない」武「です・・・」

天照「だからこその罰です、さあ、こちらに来なさい」


 天照が過ごしやすい空間を作って居た一角に、禍々まがまがしい色をした扉が1枚、新たに作られて居た。


阿遅「あ、あのっ…天照様?こ、此処は?」

天照「ええ、良太さまの案を採用させて貰いましたの。

   八百万の神々の中で建築で有名では無い者に作らせたですが、

   良い出来になりましたわ」


 それはそれは怖いくらいに美しい笑みを浮かべ扉を開く天照。

武御「まさか…天岩戸あまのいわと?!」

天照「いいえ?岩戸ならば地上に記念のように鎮座してましてよ?

   ここは反省部屋。何日持つかしらね」


 クスクス…と笑いながら「ヤラかしまくった」3柱を誘導する女神。

 従いたくないが従うしか無い状態に追い込まれて阿遅高日子根神は

(な、何故だ?!何故、この様な部屋へと送られなければならない!

 天照様に褒められる為に集められたのではないのか!?)

 と未だに反省の色なし。


天目一箇神は、と言うと(ヤ、ヤラかしてしまったのだな)と気付き、武御雷は(送るなら天照様か良太様に確認せねばならぬのだったのだな)と反省の色は見せたが、今、許してしまうと「今後又、何かしらを」と危惧した故の処置でも有った。

 まあ、この部屋に入る事になる神は3柱だけでは無いのだが…

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