第445話:顔見せだけの授業が終わり・・・

 何時もなら誰かしらから絡まれてしまうリョータでは有るが、今日ばかりは絡まれる事もなく、無事に顔見せだけの授業を終え首をひねった。


「おっかしいなぁ…何時もなら子供のクセに騎士舎に来るなとか、

 騎士になれる訳ないだろ…なんて絡まれるのに何でだ?」


絡まれないなら絡まれないで気持ち悪いのだろう、今までが「巻き込まれ体質」と思って居たにも関わらず「首を突っ込まざるを得ない」状況だった為、絡まれる事が「当たり前」だと思って居るのだ。


「何か困りごとか?」


 そう声を掛けて来たのはディラン。


「いえ…何となく…なのですが、

 今まで何かと文句を言われたりして来たでしょう?」


「あー…何となく言いたい事が判った。

 絡まれないのが気持ち悪い…とでも言うのだろう?」


「・・・はい・・・」


「まあ顔見せだけだからな。

 今は街に出来た新しい屋台とやらに夢中なだけだろう」


「え・・・?そんなに凄いんですか?」


「あー…リョータは通いだったか。

 この街に住んて居たらおのずと理解できるんだが…

 余りにも匂いが…な」


「・・・食欲を刺激するからこそ絡むより…ですか」


「まあ、そんな所だ」


 想像して欲しい…今まで「娯楽」どころか「食」に対する「欲を満たす」場所など、限られて居たのに「屋台」と言う「匂い」と「見た目」で「誘われる」食べ物が鎮座しまくってる光景を見て「我慢」など出来ようか。


彼方あちらでは「焼きそば」が、其方そちらたこ焼きが…リョータが見知って居る物が多くを占めるのだが、地方にしかない屋台すら有りそうで怖い。


「じゃあ屋台に飽きるまで絡まれない…とは限らないか…」


「それは…絡まれないと断言できないだろうな」


どれだけ絡もうがリョータが4Sクラスの猛者もさで有ると知る由もない連中が絡みに来るのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが、毎回、絡まれるのも…と思うのも実情。


「僕も暫くは屋台を堪能できそうだと考える事にします」


「そう、か」


「では失礼します」


 岐路につくリョータの背を複雑な思いで見るディラン。


(リョータに幸福な毎日が訪れる事を願うばかりだが、平穏は訪れそうも無いだろうな)


 今は子供で戦争も無い平穏な日々では有るが、何時如何なる時に戦争が勃発するかなど判らない。


 戦争となれば上位学年の生徒は必ず、前線へ送られる事になるのは確実で、リョータは年齢的には招集される事は無いだろうが、強さで召集令状が出る可能性が高い。


 日本で言う所の赤紙は異世界にも存在し、それを無視する事など不可能なのだ。


「リョータに招集が掛かるような事態が来なければ良いのだが…な」


 全ての世界が把握されて居る訳では無いので、好戦的な国が「存在しない」と断言できない。


 となると開戦してしまう可能性「も」有るだろうと懸念して居る団長は、別の意味で好戦的な連中にリョータが絡まれてしまう事まで見抜いて居る様子が伺える。


「まあアイツの場合は国ではなく個人だろうがな」


 自分の任務を全うすべく、踵を返すディラン、彼の懸念が現実を帯びる事となるのは数日後となりそうで有る

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