第409話:閑話~ヤラかしたラ・イバル商会の末路

 これは商業ギルドマスターが尾行して発覚した後の話で有る。


 クロフォード商会に乗り込み、リョータから何かしらの依頼を強引にさせるつもりだった、ラ・イバル商会の会頭と話し合いの場を持ったギルマス。


「いくらクロフォード商会がライバルだと言っても、

 やって良い事と悪い事くらい…判って居ると思っておったのだが…」


 と開口一番、ヤラかした従業員の首根っこを持った状態で、会頭に苦言を呈して居た。


「…何の事か判りかねますな…」


 自分の下っ端が「何かヤラかしたから捕縛された状態で戻って来た」と言う事「だけ」は理解できたのだが、自分は何も指示して無い…と思って居る。


 指示はしてないのだが「リョータと言う子供に何かしら恩恵が貰えないだろうか」と「つぶやいた」だけなのだ。


 それを真に受けた下っ端が暴走した結果が今に至って居るなど、思いもしてないのだが…


「実際、こちらの店員が強引にクロフォード商会の作業場に乗り込み、

 クロフォード商会へ依頼した人物を、

 引き抜こうとした現場を見たのだが…?」


 現場を見たと言われ唖然としたのは会頭。


「な?!何をヤラかしたんだ!?」


 と捕縛状態の下っ端に問いかけて居た。


「何…って…アンタが、

 リョータって子供の恩恵が欲しいって言ったのを聞いたから、

 それらしい子供を追いかけて声かけただけだ」


「そ、そんな声を掛けろと指示してないし、

 命令した覚えはない!」


「アンタ…恩恵ほしいって言ってただろ?!

 だからこそ分け前よこせって言っただけだ!

 それの何が悪いって言うんだ!

 実際、クロフォード商会は、

 何故か売り上げが急増してるじゃねぇか!」


「…だからと言って依頼主を拉致しようとするとは…

 何たる事をしてくれたんだ!」


「アンタだって、おこぼれ欲しそうにしてただろーが!」


 泥沼の言い合いが始まってしまい、収拾が付かないと判断したギルマス。


 言い合ってる2人の頭にゲンコツを落とし


(ガッ!)「いい加減にしないか!」


 と雷を落とした。


「「うぐっ!」」


「他の商会に迷惑を掛けただけでなく、

 上司と部下とで言い合いしかしない商会では、

 これより先も良い仕事を回す事など出来ないと判断し、

 商業ギルマスの権限を持って商売の許可を剥奪する!」


 宣言が成された瞬間、言霊ことだまとなり、商売の神から天罰が下り、ラ・イバル商会に属し「不正を働いて居た全員」に「罪の烙印らくいん」が押され、何処の商会にも再就職できない事が刻まれた。


「そ…そんな…」「何で私まで烙印が…」


「上司が例え、

 成功してる商会に対して羨ましがったとしても、

 欲しい等と言葉にしてはならないと、

 習わなかったか?

 羨ましいから口に出してしまった…

 だけで止まっておれば良かったが、

 それを真に受けた者が居た」


 その場に居合わせた従業員たちは烙印を押されなかった事で、他の商会に再就職でき、会頭と暴走した職員は何処にも働き口が出来ず、引退を余儀なくされ、会頭は自死し、暴走者は行方不明になったそうな(ラ・イバル商会…消滅)

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