第397話:設計図は誰に頼む?(1)

 現状では「見た目を重視した形」での作成が出来て居るのだが、日本と違い、異世界の道路事情は悪い筈。


 そうなると「日本式の車の形」では「走行中の事故」も考えられる。


 基本的な形を見たまま作れては居るが、何年…何十年先も作れるか?と問われると「無理かも」と予測できる。


 未来でも基本的な設計図を残しておけば、進化した品を生み出したいと望む職人が生まれるカモ知れない。


 色々と模索はするが、職人が居なければ話が先に進まない。


 リョータはレイを見つけ、声を掛ける。


「レイさん、相談が有るんだけど…」


 傍に商会の職員が居た為、子供な話し方で声を掛けた。


「何か問題でも?」


「いえ…そう言う訳では無いのですが…」


 誓約して無い従業員が居るからだと理解したレイは


「その商品は現状を維持して仕入れて欲しい」


 と何かしらの品を仕入れる願いをしたようだった。


「早速、手配いたします」


 そう言って従業員の男性は2人の傍から離れて行き、ようやく本題へと話が進みそうになったが、流石に人目が多い廊下では駄目だと思ったレイが


「職人たちが居る空間で大丈夫だろうか?」


 と誓約して居る人物しか居ない空間で話を聞く事にしてくれたのだ。


「うん…お願いします」


 聞き耳を立ててそうな従業員が居た為、リョータは子供な返事しか出来ない状態だった。


 何だろ…何かしら疑いを俺に対して持ってるのかも知れないな。


 職人たちが居る空間に入った瞬間に結界と遮音を掛け


「将来的に車を量産する時に、

 設計図が有った方が同じ形で作れるようになると思うんだけど、

 何かしら図案を描く専門の人とかって居るんだろうか?」


 と切り出したのだ。


「図案…ですか」


 1分くらいだろうか、思案して居たレイの背中に


「見た品を描く職人なら居ますよ」


 と結界の外から声が掛けられリョータは驚きを隠せなかった。


「え・・・?どうして僕の魔法を破って声が掛けられたんだ?!」


 その声の主は、リョータの動向に疑念を抱いて居た人物。


 レイが真っ青な顔色で


「此処には入らないよう通達が行って居る筈だが…

 君は誰だ?」


 と「従業員では無い」と断言した声で、情報が漏洩してしまう事に血の気が引いて行く。


「・・・何だ・・・気づかれてしまったか。

 商売敵しょうばいがたきの情報を盗める、

 チャンスだと思ったのにな…」


 そう、リョータに疑念を持った…のではなく、リョータに金の匂いを感じた敵とも言える商会の人間が、従業員に紛れ込んで居たのだ。


 商売敵…と言われた瞬間リョータは、開発中の車やら異世界の品々が乱立する空間に強烈な「不可視」の魔法を掛けた。


「居る事を教えてくれてありがと!

 でもレイさんに情報なんて特に無いんだけど?」


 情報を盗む気マンマンでリョータの背後に視線を向けて居たのだが、何もない空間が飛び込み


「何かしら子供が発信源で作ってるとばかり思ってたが、

 当てが外れたのか?何もない…」


 残念そうに何もない空間を見つめ、その場から立ち去って行く…のだが、その背中にリョータが「完全消去コンプリート・イレーサ」の魔法を行使した。


 一部消去イレースでは「クロフォード商会に情報を盗みに行った」と言う事を「覚えて居る」可能性が残ると思い、完全消去の魔法を作ってしまったのだ。


 図案を描く人が居ると教えてくれた事には感謝して、そう言う人が登録するなら商人ギルドか?と考え、誰なのかを教えて貰えるカモと訪問する事が決まった瞬間となる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る