第376話:ウレタン…の前に自分専用の空間を

 クッションとして参考資料にあったのは「ウレタン」で、実際のシート素材にも使われている。が、異世界こちらに「作れる材料がある」か?となると不明なのだ。


「ん~…っと」


 ググるにしたって、此処(作業場)では無理だな。


 俺専用の空間を用意して貰った方が、イイか?


 レイさんに相談しなきゃだな。


 スマホで異世界の品が買える事など、正直に話してない。


 話してしまえば「開発が進まなくなる」だけでなく、依存してしまう可能性が出てくると思っている。


 レイだけに話すか?とも考えたが、それでは不公平になる…と思い、誰にも話さない方向に持って行く事とした。


 だったら「リョータ専用の部屋」を設けたとしても、考える場所がいるのだろうか?と言う考えに至って貰える可能性はあるだろう。


 キョロキョロと周囲を見渡すも、そこにレイの姿はない為、リョータは


「ちょっとレイさんに相談があるから、

 少し離れても大丈夫だよな?」


 と他の職人たちに声を掛けた。


「ああ、今の所はクッション…だったか、

 その開発が先だろう?」


「そうなるだろうな。

 他の場所も作って貰わなければならないが、

 材料が集まってない…だろう?」


 作る用意「は」出来ている。が、作る為の材料…原料が現時点では揃ってない。


 基本の材料はあるが、加工するだけの原料は無いので、作れる場所だけ出来上がっている状態なのだ。


「あー…確かに、形作る事が出来ると判っても、

 材料が無ければ作れないからな」


「まあ実験するしかない品すらあるくらいだし、

 そんなに急いだとしても、

 走る実験の場所は決まってないしな」


 作業場を後にしながら、リョータは走行実験するなら、何処ぞの山を開拓するしかないかも知れない事も視野に入れ、レイに相談する事とした。



 * * * *


 レイを見つけたリョータは


「レイさん、俺専用の空間を用意して貰えないだろうか?」


 と先ずは、場所の確保を願い出た。


「リョータ専用…と言う事は、

 何かしらの案を考えたりする場所が欲しい、

 と言う事だろうか?」


「ああ、その考えで合ってるな」


「1人分の空間…それなら…

 此処(執務室)を使ってくれて構わない」


「いやいや、駄目だろ?!

 此処って執務室だよな?

 レイさんたち、

 商人が商談に使う場所だろう?

 そんな場所を貰う訳に行かない」


「だったら作業場の一角…

 空いてる空間に個室を作ると言うのは?」


「…俺が作る事になりそうだな」


 既に車の本体と見本が作られている空間に「大工」を呼ぶ訳に行かない。


 となれば、自然と何もかも「出来てしまいそうな」リョータが請け負う他なさそうなのは判り切っていた。


 スマホでググルだけの空間…では心もとないと思い、机と椅子を置けて誰かが入って来ても不思議ではない部屋を作る事にしたのだった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る