第348話:事の次第を報告
ムーア卿が、しかめっ面な表情を団長に向け
「愚息のその後を知りに来た…と言う態度ではなさそうだが…」
と阿呆と化してしまった息子の結末を知りに来た訳ではなさそうだ、と言う事には気づいたようだ。
「え…ええ。
とてもではありませんが…信じがたい事が起きたとしか…」
「話が長くなりそうだな、座ってくれ」
ムーア卿は上座、次に身分が高いであろう団長さん、そして年齢的に上なブラッドさん、俺は当然下座な状態で
「「「失礼します」」」
と一声かけ、腰を下ろした。
「愚息の事で合っているな?」
「はい…更生させる為、どちらかへ送られたと思うのですが…」
「あぁ。見張りを付けた状態で送ったのだが、先ほど魔法便で、姿が消えたと報告を貰った所だ」
「そう…でしたか。詳細を彼…リョータ殿にして貰う許可を頂きたい」
「愚息が迷惑をかけた御仁…だな?何があったと言うのだ」
「あのね…僕、自宅を構える場所がなくて、森の中に作ったんだけど、
少し前、異変を感じて周辺を魔物かな?って調べたら、
魔物じゃなくて気配を人に変えたら、
子供らしく…と極力思いながらも言葉を発しても尚、森に自宅などと言う「規格外」な事柄を告げられれば、皆が「ぽかーん」となるのは仕方ないだろう。
「森に…」「自宅を」「規格外だが…な」
子爵様、団長さん、ブラッドさんと表情がこわばった状態で言葉を発したのだが、その後を知りたいと思ったのか子爵様は
「あやつが屍食鬼…だと?」
「うん…右手に魔物の手を付けた状態で現れたんだ。
右手が無い元人間…と言ったら1人しか僕、知らなかったから、彼だと思ったんだ。
人間、やめっちゃったの?と思ったけど、殺意しか向けて来なかったから、
対峙するつもりで武器を構えたんだけど…
その魔物の能力を受け継いだみたいで凶悪な存在になってたんだ」
「「何と」馬鹿な奴め」
「俺が見かけた時には、倒せなくて悪戦苦闘してるようだったんだ」
団長さんは「何と」で留めたけど、子爵様は馬鹿だと言い切ってしまった。
そしてブラッドさんは俺が対峙してる姿を見た所から言葉を補足してくれるようになった。
「それで愚息は倒せたのだろうか?」
「僕が魔法を使って拘束してブラッドさんと一緒に仕留めた…
けど…魔物になっちゃったから…人としての形って言うの?
僕に絡んだ彼だって判る部分、1つしか残ってなくて…」
そこで気づいたのが子爵。
「…なるほど、団長殿が確認してはくれたが、
それが我が愚息だと証明できぬ…と言う事か」
「うん…骨になっちゃったから…
そのまま持って来る訳にも行かないし、
ブラッドさんが証人になってくれて、
森の木を人が入るくらいに加工して持って来たんだ」
団長が、その物体を見た時に「これは有用な形として浸透しそうだ」と思ったらしく、木工部門にレシピを売ってみないか?と打診した程だ。
「愚息は人として生を終えなかった…のだな」
「魔物の手だけ狙っても駄目だって出たから…
討伐するしかなくて…ごめんな「…いや、謝って欲しい訳では無い」え?」
「討伐せざるを得ない程、脅威だったのだろう?ならば謝罪は不要だ。
君を殺す事しか考えられなくなり、魔物と化したのは愚息だ。
愚息が魔物となったが為に対峙したのだろう?」
謝罪はいらないと言われたリョータは、骨と化してしまった彼を何処へ安置するのだろうかと思いながら「うん」と返事をした
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