第347話:ムーア邸を訪問

 団長を先頭にしてブラッドとリョータが付いて行く。


「団長さん、歩いて行ける距離なの?」


 普通、邸宅へ向かうなら馬車が用意される…と言う事は、常識として知られているから聞けた訳で、貴族エリアがある…と言う事くらいしかリョータの知識にはなかったからこそ確認した。


「事前連絡なしで向かう場合は、馬車を使わないんだ」


 へぇ…そんなルールあったんだ…とは言え、ブラッドさんガチガチだねぇ。


「そうなんだ…僕は一度、

 侯爵家に向かった事あるから免疫あるけど…

 ブラッドさんみたいな冒険者が訪問して何も言われない?」


「あー…俺が最初に説明するから、

 大丈夫だとは思うが…

 精神的苦痛がありそうだな」


 団長の視線がブラッドに向けられると、そこには顔面蒼白な状態で右手と右足が同時に動かしている様が映ったのだ。


 デスヨネー…俺だってルーカス様の邸宅に向かうって言われてガチガチに…なってなかったっけ(対応しすぎてる俺って一体…)。


「仕方ないよ。僕は学校で爵位持ってる人から、

 絡まれるしかなかったって状態、続いてるし…」


「「・・・なんて不幸なんだ」」


 何故かブラッドと団長の声が重なってしまい


「えー…2人して本当の事、言わなくても良くない?!」


 とふてくされ、その場の緊張は少しだけ、緩和されたようだった。



 * * * *


 ムーア邸の入口は、邸宅を守る人物がいる訳では無いようで、何事もなく、敷地へと入る事が出来た。


「…ねぇ…団長さん、僕の認識だと、

 門番さんがいると思ってたんだけど…」


 そう聞いてみると


「あ~…リョータに奴が絡んだだろう?

 あの時に色々と問題を片づけたらしくてな。

 スッキリしたらしい…とは聞いてたが、

 まさか…ここまでとは思ってなかった」


 あー…自分の息子が阿呆になってしまっていたから、警備とかに何かしら無いかと調べた結果、不正やら違法行為やら「やらかしてた」って事で首にしてったら、誰も残らなかった…って事か。


「…そうなんだ…」(ご愁傷様と言うか…ご苦労様と言うか…)


 玄関先に到着すると、数少なくなってしまっているのか、執事服を着た男性が出迎えてくれた。


「これはこれは騎士団長様、本日の訪問を聞いておりませんが、

 如何いかがなされましたかな?」


「元…と言うべきであろうか、

 アンディー殿の事で報告せねばならぬ事態が起きてな…」


 はっきり言えない事柄が起きた…と理解したのだろうか、執事は


「…そう言う事でしたら、旦那様と会って頂き直接、

 お話いただければ…と思いますので中へどうぞ」


 とムーア卿がいるであろう場所へと案内してくれた。



 * * * *


 案内された先で目の下にクマを作ってしまっている、あの時の父親がいた。


 何か…これ…報告しちゃったらショックがデカいんじゃ…。


 そう思ってしまう程、意気消沈と言うか疲れ果てている男性が書き物をしていた手を止め、顔を上げ3人の姿を見据えて、何が起きたのかを瞬時ではないのだが、把握したようだった

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