第344話:先ずは移動

 何とかスキルやら魔法やらを駆使して、日本で見かける棺っぽい形を作る事が出来たリョータは、屍食鬼グールと化して討伐されてしまった問題児の骨を箱の中へ、人の形として入れる事が出来た。


「コイツが何処の誰か判らない状態で、

 運ぶ事を懸念してはいたが…

 お前…凄すぎだぞ」


 そう吐露したのは、証人となって貰ったブラッドで、木片から箱型になるまでを目撃して、目を点にしていたのだ。


「そんな事いっても、僕…

 思ってしまった事が魔法になっちゃうって言ったでしょ?

 好きで凄い魔法を覚えた訳じゃないもん」


 まるで親に叱られた子供のように、うなだれてしまうリョータ。


「あ、ああ、そんなショボンとするんじゃねぇ!

 怒ってる訳じゃない。呆れてるだけだ!」


 同じじゃん!


 プクー…と膨れ睨みつけるのだが、それは可愛い睨み。


 ブラッドは笑っては駄目だと思っても口元が緩んでしまう。


「ぷっ…ぷぷ…と、所で…その骨、

 どうするんだ?」


「そりゃぁ…親元に届けなきゃだけど、

 何処の誰っての知らないから、

 団長さんに経緯を説明しなきゃでしょ?」


「確かに…その骨が人だと判るっちゃー判るが、

 それが骨になる前の事や何故、骨になったか…

 説明が必要って事か」


「それに僕の言葉だけだと父親は信用しないよね?」


「あー…子供が報告に来て、

 自分の息子が屍食鬼となり襲撃して来た…

 なんて言われて『はい、そうですか迷惑かけました』

 とは、ならないな」


 そう…一番、懸念しなければならないのが、コレが元問題児で屍食鬼と化し、リョータを襲撃して来たから討伐せざるを得なかったと説明する事。


 リョータ1人で説明に行ったとしても、信用して貰えない可能性があるのだ。


「ところで何でブラッドさんが、こんな森の奥に来てるの?」


「…忘れてた…討伐からの帰り道でな、

 戦闘する雰囲気をたどって来たら…

 あの状態だった…って…

 どうやって戻るんだ?」


 ぉぃ…何も考えなしで、俺が戦ってるのが目に飛び込んだから加勢したってか?


 まあ、結果的に有難かったけどさぁ…。


「内緒にしてくれるんだったら森の入口までで送るけど?」


 転移…と聞いた瞬間「鳩が豆鉄砲を食ったような顔」になったのは、言うまでもない。


「お前…どんだけ凄いすげぇんだよ…」


 溜息を吐き出してリョータの案に乗り、森の入口へと転移した。



 * * * *


 転移した場所はブラッドも見知った門近くの森。


 そこまで一瞬で移動できるリョータの魔法は他人には伝える事が出来ない…と腹を括った。


「リョータ」


「何?」


「その骨…団長に持って行くのか?」


「うん、このまま持ってるのも後味わるいし…」


 学校を抜け出し殺そうと模索するも、リョータに気づかれ、親に右手を切り落とされした問題児…とは言え、望んで屍食鬼になった訳では無いと思いたいが、望んでなっていたら怖い。


 ブラッドとリョータが同時に門を通るのは初めてだった為、かなり驚かれはしたが、何かしら聞かれる事なく、騎士団詰め所へと向かう事が出来たのである

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