第343話:骨の行く末は…

 何に入れて運べばいいか…までは聞いてないのだが、流石に「骨壺」で持って行く訳にもいかないな…と思った。


「ねぇ…ブラッドさん」


「ん?」


「僕、記憶が無いでしょ?

 でさ…人が亡くなったりした時って…

 どうやって弔うの?」


 全てを白状している訳ではないブラッドに「記憶が無い設定」である事は、伝える訳にはいかないと思って「記憶が無い」で発言をめた。


「あー…土葬が主だな。となると…その骨状態だと、

 疑われかねない…か」


「記録用の魔道具とか使わなかったから…

 この骨が問題児って判らないって事?!

 どうしよう!」


 日本のように火葬ならば、骨となって戻る事もありえるのだが、異世界では土葬。


 しかも目の前にあるのは元問題児だった骨…これが本人である…と言う証明は、もはや出来ない状態だと判るのだが、一か所だけ、これが問題児「だった」と「証明」できる場所がある。


「リョータ落ち着け!

 そいつは父親に右手を切られたって言ったよな?」


「うん。僕を切り殺そうとしてる所に、

 彼の父親が来て右手を切り落とし…た…か…」


 そこまで言って冷静になれた。


「冷静になったか?」


「…うん…ごめんなさい。

 団長さんにこのままの状態で見せれば判るって事…

 だよね?」


「ああ。この状態で何かしらに入れる事が出来るんだったら、

 その方が理解して貰えやすい」


 でもなぁ…日本の棺って異世界に持ち込んでいいのかねぇ。


 その懸念が拭えないが、現状では棺で骨を運ぶ方法しか考えられず、そのままの状態を維持して運ぶ方法として確立させればいいか、と方向転換するしか思いつかなかった。


「ブラッドさん、証人になってね?」


「ん?どう言う事の証人だ?」


「この状態を維持して運ぶのは、

 マジックボックスを持ってたとしても渡す時が困るでしょ?」


「ああ」


「でね、この森の木を1本…

 伐採して人が入るくらいの箱を用意したいんだよ」


「…作るって言う事か」


「それも入ってるけど、勝手に切ったなんて言われたくないんだ」


「あ~…そう言えば木工職人だったか、

 森の木が大量に入るからって、お前に絡んだって噂があったな」


 何ソレ…確かに絡まれたけど…それすら噂になってたんかーい。


 ガックリと肩を落とすリョータだが、棺を作る必要がある為、

 加工しやすい木を1本、伐採し霊柩車シリーズで見た事のある形を模範し、棺を作って行く。


 うーん…細部まで見えない…とは言っても、やっぱり組み立て式だろうから、板同士を組み立てる方向で作らないと…か。


 本来なら大工道具でノコを使い、カンナを掛け…と順序立てて作るのだろうが、如何いかんせん、リョータは異世界に転生して魔法と言うチートを貰っている。


 建築魔法と言うのを「覚えて」しまっていたので、応用させ作り上げてしまう。


「・・・とんでもねぇな・・・」


 それを見てしまったブラッドは目撃してしまった事柄も秘匿しなければな、と堅く決意するしかなかった(そうな)

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