第339話:静かな森に不穏な空気

 自宅に戻ったリョータは、雪が深々と…と言う雰囲気は、この世界に無いようで、体温的な寒さ以外に冬を感じる事はなさそうだ、と残念に思っていた。


「ばあちゃんと生活してた時も雪深い場所じゃなかったから、

 雪関連には縁遠かったから期待してたんだけどなぁ…。

 北海道の奥地並みの寒さ…じゃないけど、

 これくらいなら冬を感じられ…ん?!何だ…?」


 中断させてしまっていた木材から薪への加工をサク…と済ませ、適量を保管して室内へと運び入れている時に、何かしらの違和感を感じ取って言葉が止まってしまった。


「周辺検索サーチ…」


あるじ?】


 念のため、影から小桜を召喚して作業に当たっていたからこそ、主人の違和感を感じているのに気づいた。


検索サーチ…じゃあ探れないか。

 気配察知」


 それでも「違和感が何なのか」判らなかった。


【主…違和感が何なのか…わたくしも判り兼ねますわ】


「小桜も判らない…か」


 じわり…じわりと、その何かがハッキリ気づく事が出来ない歯がゆさ…リョータは苦虫を噛み締める。


「一体何だ…この違和感…」


 室内だから判らないのだろうか…と思い、寒さ対策をした状態で、外へと出た瞬間、何処からともなく異様な雰囲気が漂って来た。


「・・・何処だ・・・」


 誰だ…ではなく何処だ…だった。


 何かがいる…と言うのは判るのだが、何かは判らないし何処と言うのすら不確定。


「くそっ…何だって言うんだ!?」


 正体不明で不穏な空気にリョータは焦りを感じてしまう。


 背後に家の玄関がある状態で、神経をぐるり…と張り巡らしても「何がいる」「何がある」が判らなかった。


【…確かに奇妙ですわ…。

 こんなに冬など…

 今までに感じた事が無いですわね】


「え…?魔物の気配が…本当だ…無い」


 いくら冬の森とは言え、冬に活動する魔物存在する筈なのに、その気配すら全く感じられない。


 自分が自宅を作った周辺には魔物の気配は無いのだが、リッツェやアヴェルの方角には僅かではあったが、気配が残っているのに気づいた。


「冬場に活動できる魔物は数える程しかいない…てのは、

 図鑑で知ったけど、それ以外の魔物…

 冬に活動しない魔物の気配は…

 うーんと…穴の中とかにあるな」


 ベア系の魔物は冬ごもり、リス系の魔物は木の中、ココは冬でも活動はするものの、活動範囲は狭くなる部類(らしい)。


 となれば動いているであろう不可思議な現象は、冬でも活動できる人や死人…屍食鬼グールと言う遺体を媒介にして徘徊する魔物なら活動できる…と考えた瞬間、リョータは今まで「魔物がいないか」を検索サーチしていた事に気づいた。


「まさか…屍食鬼となった人が徘徊してる?」


【そんな、まさかっ!】


 屍食鬼と化した人間は、自分が魔物になった事すら理解してない…と言う説明が書かれていたのを覚えていた。


 だったら「これ」は屍食鬼の気配で、強者な人物が「なってしまった」のではないか?と考えられ、一気にリョータは緊張感を漂わせ始める。


 もし屍食鬼が男性なら、かなりの強敵が「なってしまった」んだろうな。


 女性で「ここまで気配が強敵だ」と思わるのは難しそうだし…。


 色々と考えを巡らせながらも「どちらから来ているのか?」を把握すべく、気配察知は魔物相手ではなく人間相手に集中させた

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