第338話:帰宅は余裕で…

 冬の日暮れは日本「以上」に早いらしく、リョータがクロフォード商会を出て間もなく、魔道具の明かりが自動的に灯り始めて行く様を見て


「うげぇ…これ…マジ無理かも…」


 とギルド上でお世話にならないと駄目っぽく感じつつも「駄目もと駄目でもともと!」てな勢いで顔見知りとなった門番に声を掛けるつもりでいたが…


「あれま…何時も声を掛けてくれる人じゃないっぽいな」


 と顔見知りでは無い人物が門を閉めて守りに入る用意をしてるのが見えた。


「お?!お前さんはスタンピードの坊主だよな?

 今から森を抜けて何処かへ戻るつもりなら止めておけよ?」


 あの時の目撃者、此処にもいたんかーい!


 叫びそうになったものの、強さを「知っているにも関わらず出るな」と言う理由が知りたかった。


「その噂…結構、知られてるんだ。

 だったら僕のランクも知られてたりする?」


「あぁ…Sだったか。

 なら大丈夫か・・・」


「あれ?もしかして僕のランクがFとかAだったら、

 出る事が出来なかった?」


「そうだな。記憶が無いって言われてたっけ。

 領地規則と言ってな、

 リッツェ・アヴェル・ティング…

 それぞれ違うんだが、夜間は森に冒険者を出すなら、

 Aランクで指名依頼を受けたパーティしくは、

 Sランク冒険者のみとする…てのが定められてんだよ」


 あー…そう言う事。ランクが低い人が夜間に森へ入って「襲われ瀕死になった過去がある」ってか。


「まさかだけどさぁ…それを守らなかった人が過去にいた…

 とか?」


「・・・いた・・・じゃないんだわ。

 るんだよ」


「…それって僕くらいの年齢とか…言わな…

 「いや、お前さんと同い年くらいだ」」


 アホやわ(あ、大阪弁の言い方好きだから出ちまう)。


 だから禁止にした…って所か。


「でも、お前さんなら通行は出来るが…出るのか?」


「…だって僕の家…森の向こうだもん…」


 森の中…とは言えない為「森の向こう」にした。


「そう言えばリッツェ周辺には家を作ったか持ったか…

 したんだよな。

 とは言えギルド上に泊ま…ああ…

 学校は休みだな」


「うん。冬休みに入ってるから勉強は春まで無いし、

 冒険者するにも冬で行動できる場所って、

 ほぼ無いでしょ?」


「無いな。じゃあ帰るしかないんだな。

 ま、お前さんならSだし心配しなくて大丈夫だろ」


 一度、閉められた門の横には依頼で出る冒険者や、移動で出る冒険者の為に用意された1人分の扉が設置してあり、そちらは門番「しか」開ける事が出来ない仕組みとなっている。


 リョータ1人ではあるが、そこが開かれて行く。


「信用はしてるが気を付けろよ?」


「はぁ~い…」


 挨拶がわり…だろうなぁ。Sであっても「気を付けろ」って言われるのは。


 門を守る人の見送りを受けたリョータは、寒くなり始めた夜の森へと向かう恰好で進み、門が閉じられた瞬間に自宅へと転移したのだった

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