第335話:短い距離にも関わらず…

 ジワ~…と言う(10キロ出てない)くらいの速度ではあるが、黒光りする物体が動く様を見た職人の感想が、言い得て妙…だった。


「「「うわっ!!本当に馬が引いてないのに動いた」」」


「「「どうやって起動させた?!

   動かしてる道具と言うのだろうか…その仕組みは一体!?」」」


 馬がいないのに動く仕組みに驚く馬車職人(前者発言)と、道具がらみで驚く職人(後者発言)が遮音を施してる施設内に響く。


 そりゃそーだよねー…馬の力って日本語の「馬力」だもんな。


 エンジンが恐らく魔石として作られてんじゃないかとは思うけど、ボンネット部分って開くのかねぇ…後で確認しなきゃな。


 又もや質問攻めされるだろうなと覚悟したリョータ。


 エンジンを切って下車すると


「一応、さっきの速度だと人が歩くより遅いくらいだよな?

 馬が走る速度くらいには出来るとは思うけど、

 道の整備をしないと危険だから、

 それは踏まえて欲しい」


 そう忠告した。


 扉は開いた状態で前方…つまりボンネット部分を確認した。


「俺はちょっと確認したい部分があるから…」


 と言いつつ、ボンネット部分が「開く」か確認すると、開く仕組みになっており、うろ覚えの知識をフル活用してパカ…と開けてみる。


 おおっ!これはまさしくエンジンもどき…ってかエンジンそのものじゃねぇか!


 ナビさんや、これ…魔道具って言い張れるの?


『言い張れるかと…エーテルディアに存在しない道具類は全て、

 魔道具と言えるのです。

 えんじん…でしたか、そちらを魔道具と言っても不思議がりはしても、

 疑わないかと思われます。

 恐らくですが、きゅうゆ…と言う行為をする場所に魔石があるかと…』


 あ~…なるほどなぁ…電気自動車は前方部分にコンセントみたいなって言うの?あんなの刺さってるの見た事あるんだけど、仕組みは知らん!


 そうなれば自然とガソリンとかハイオクとか、給油って方法を魔石に変換した方が有意義だわな。


「リョ…リョータ殿?」


「ああ、すみません。確認してたのは自動車…

 こちらの呼び方を考えた方がいいですが今は、

 このままで…その動かす動力が、

 備わっているかを確認したんですよ」


「まさか…備わっていたんですか?!」


「えぇ…まあ使われている材料があるかは調べないとですけど…

 見て頂ければ判るかと…」


 魔道具職人の1人…ローガンがゴクリ…と唾をのみ込み、リョータが開いた場所を覗き、目を見開く。


「なっ?!何じゃこれはぁ!!」


 アー…説明シ忘レマシタ…ゴメンナサイ。


 てか、そりゃそうだよな。驚かない方が変だわ。


 何せ異世界には無い素材で無い形だもん…何だ?!って思うのも仕方ないやねー。


「説明しませんでしたが、

 ここにあるのは動かすのに必要な動力源となる道具です。

 異世界あちらの呼び方をしますと、

 エンジンと呼ばれる部分ですよ」


 隅から隅まで取り出してでも見たそうな雰囲気でめ回すように見るローガン…申し訳ないな…と思いつつも、取り出せるか鑑定を掛け、取り出せると答えれば喜んで解体してしまう結果になるまで、あと少し

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