第334話:職人たちからの質問攻め
道具を担当する者たちは、それぞれ散って行き、卓上に置かれた紙片を使って異世界で作られているであろう品を
「車体前面に据えられているのは、恐らく明かりの魔道具…
それを実現させるとしたら…
ガラスと明かりを灯す道具を組み合わせて…
だと危険すぎるか?」
「発火の危険があるのなら、
それを防止する魔法を付与するのもアリ…?
でも前例が…」
「なければ作ればいい」
前例がない…と発言した職人の声を拾ったリョータが、無ければ作ればいいと助言すると
「…いいんだろうか…我々が前例となるのは…」
と不安な声を上げた。
「馬車がこの世界で初めて作られた記録って残ってるんだろう?
その時、前例が無いから…って躊躇した記録って残ってない筈…
って事は前例を作ったって大丈夫って事じゃないのか?」
そう言われた職人たちは「はっ!」と言う顔つきで互いの顔を見合い、直ぐに設計図を立ち上げ始めた。
「リョ…リョータ殿…こ、この丸い物体は…?」
室内をくまなく見ていたであろうジェイデンが、何に使うか判らない物から聞こうと口火を切った(らしい)。
「ああ、それは馬車で言うなら、
方向転換する事が出来るアイテム…って所だな。
俺が動かしてみるから車輪を見てるといい」
馬車職人うち2名が車輪に目を向け、1名がハンドルが「どう動き、どう作用するのか」を見るよう待ち構えてくれた。
(流石…と言うべきだなぁ…。
普通の職人なら1か所集中でガン見するんだけど、
彼らは
作られた施設は地面なのでキュ…と言う床の音がするのではなく、車輪がスレてジャリ…と言う音が聞こえるが、僅かだ。
椅子状の場所に座り、丸い部分を右方向に動かせば車輪は右に、逆に動かせば左に…前の車輪だけが動く仕組みに目を見開いた。
「「「こ、これは凄い!」」」
「リョ…リョータ殿、これは動かせないですか!?
動く姿を見たいです!」
「…これを今、民衆がウロウロしてる市中に出して、
驚かれないと言い切れるのでしたら動かしますけど?」
先ほど説明を受けたにも関わらず、人目に触れる危険性を顧みないで走る姿を見たいと言ってしまい…
「あ」
と記憶を消されてしまう結果になっていたであろうルークが「しょぼん」としてしまった。
ちらり…と室内を見渡し少しなら動かせそうだと思えたリョータは
「…速度を出さなくて動く姿だけ…と言う事でしたら、
ここで動かすか…」
と魔力で動くよう設定されているであろう自動車に乗り込み思考の海に溺れているであろう魔道具の職人とレイに
「良かったら少しの距離ですが、動く姿を見せる事が可能です。
見ま「…みせてくれっ!」す…(食いつき良すぎ)」
溜息を吐き出すものの、数メートルしか走らせる空間が無いにも関わらず、見たいと望む者たちがキラキラした顔でリョータを見る姿に、こりゃ駄目だ…と魔力を充填し、付属品として付いていたキーを回しエンジンを始動させた。
これ…もっと速度が出せるって知った時が怖い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます