第314話:職人たちとの面接

 クロフォード商会にて大規模な職人募集が行われる…と言った内容の「噂」が出回っていて、腕に覚えのある…ありとあらゆる職人たちが、クロフォード商会へと雪崩れ込もうとしていた。


「噂で聞いた話だと、

 クロフォード商会で、

 何かしらの職人を抱え込むらしい」


「どの職人も抱えてくれるのだろうか?」


「全ての職人を抱える…と言う噂まで出てないらしい」


 家具職人・道具職人・魔法道具職人…職人として活躍する人々が「自分を選んで欲しい」とばかりに屋敷を目指しているのだ。


 勿論、誓約書を書かなければならない程の重要事項に、関わるなどとは知らぬまま…。


 * * * *


 一方のクロフォード家では、馬車を作る職人と魔法道具を作る職人のみに絞る為、入口で「お帰り頂く職人」と「候補者」として残される職人とに分けられていく。


 馬車を作る職人は確定しているのだが、魔法道具の職人を候補に入れた理由は、リョータが考えた方法を、魔法の道具なら何とか出来るかも知れない…との思惑からではあった。


「馬車を作る事に関わる職人の方は此方こちらに…

 魔法道具に関わる職人の方は彼方あちらにお願い致します。

 その他の方は…申し訳ございませんが、

 今回は縁が無かったと思って下さい」


 馬車職人と魔法道具職人「以外」の職人は、肩を落とし去って行き、該当する職人たちは「何を作れるようになるのだろう」と言う期待の眼差しで、待機場所へと案内されて行った。



* * * *


「馬車職人の皆様、

 ご説明させて頂きますが、

 クロフォード家お抱え職人になって頂く前に、

 誓約書を書く事柄になる…

 と言う事を踏まえて頂かなければなりません」


 馬車職人が集められている空間が、ざわ…と驚愕の声に染まる。


「おいおい、えらい事柄に携わる事になるんじゃねぇか?」


「外に出せない事柄だと?!」


「そんな…凄い事に関われると言うのか?」


 様々な声が上がる中


「もし、誓約書などに縛られるのは…

 と思われる職人は戻って頂いて構いません。

 抱え職人ではありませんが、

 今まで通り、お願いする事柄を持ち込ませて頂きます」


 との説明があり、1人…2人…と集まった場所から、自分の工房へと戻って行く職人が出て来た。


 勿論、腕に覚えがあり、こんな楽しい事柄に、絡まないなんて勿体ない…と思っている職人が5人ほど残る。


「どんな事を誓約されるか知らないが、

 こんな楽しそうな事柄、逃したくねぇよな」


「あぁ、そうだな」


 5人が5人共に良い顔になり、誓約書を見せて欲しいと願う。


 勿論、魔法道具職人の方でも同じ事が行われており、そちらの人数は3名と少なかったらしい。


「では皆様には誓約書を見て頂きます。

 勿論、読んで見られ、

 これは守れないと思った場合は降りて頂いても構いません。

 その場合の罰則は設けてませんので安心して下さい」


 1枚づつ…配られて行く誓約書…そこには


====================

         誓約書

1.クロフォード家で見聞きした事柄は絶対に漏らさない

2.何を作る為に集められたか聞かれても口にしない

3.関係者が何者であっても疑問に思わない

4.完成したとしても解雇とはならない

5.次なる依頼がある可能性も視野に誓約する

6.職人用住居への移り住みを希望すれば叶えて貰える

7.家族にもクロフォード家お抱え職人である旨は

 吐露してはならない

8.無理な作りである場合は遠慮なく指摘して構わない

9.図案が示されたとしても同じ物を作りだそうとしない

10.以上の事柄を守らない場合は記憶の封印を施される事を

 誓約する

====================

 そう書かれており、職人たちは「とんでもない物を作る事になるのでは?」と言う期待と不安を抱えてでも誓約書に氏名を記入して行ったのだった

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