第315話:動き始める歯車
5人の馬車職人と3人の魔法道具職人たちは、作業場として別空間へと案内されて行く事となった。
「お抱え職人となった皆様には、
我々が用意した空間での作業をして頂く事となります。
そして、完成品となるまでは、
職人専用の空間からの通い…
と言う形を取らせて頂きたいと思ってます」
そう説明をしに来たのは、まさかな人物だった。
「「「「「「「「クロフォードさまぁ?!」」」」」」」」
会長より息子の方が有名ではあるが、会長となったアイザックも、かなり有名ではある。
その2名が、自分たちを案内する役割を持って来るなど想定外で、驚きすぎて固まってしまった(ようだ)。
「そんなに固まられてしまうと…」「何とも言い難くなるのだがな…」
固まられて困惑したレイと、単に困惑したアイザックの言葉だけが空間に広がる。
A「そ、そ、そんな事いわれましても…」
B「私たち職人からすれば…」
C「雲の上の存在で…」D「お目に掛かれるなど…」
馬車職人の内、A・B・C・Dが戸惑いながらも言葉を尽くしてくれた。
「これから長い期間、
関わって行く事となるのだぞ?
今から、こんなに固まられてしまうと…」
アイザックが懸念を口に出すと
E「そこは職人ですので、
仕事を頂ければ普通になれるかと…」
と一番、冷静そうな人物がフォローする言葉を口にした。
5名…残った中に誓約したものの、技術を盗めるものなら盗みたい…と思ってしまった職人が2名、紛れ込んでいるのだが、誰も「その事」に気づいていなかった(リョータが気づくまでだが…)。
ただアイザックは職人同士の顔合わせをすべきか悩んでいるようだった。
(このまま魔法道具の職人と合わせて良いのだろうか?)
魔法道具の職人が残った際の反応と、馬車職人が残った時の反応が「あまりにも違い過ぎ」た為、困惑してしまったのだ。
(リョータ殿に何かしら作って貰うのもアリ…か?)
魔法道具の職人に願い出る事も出来るだろうが、提案したリョータなら「違い過ぎる原因」を知る事も、可能ではないか?と考えたのだ。
面接して言葉を尽くした結果、残ってくれた職人だからこそ信じたい気持ちも持っている。が、ものづくりのプロと言うべき職人が「こうも違うのは何故か?」と言う事にまで気づけない。
道具を作る職人に「これを作って欲しい」と願い出たとしても作れるとは思っているが「これ」が現状、把握できてないから願い出れないのだ。
リョータからは昨日「明日には決まるだろうから、訪問する」と聞かされてはいる。
だが、問題の解決を願い出ても良いものだろうか?と会長として判断しかねている。
「ち…会長、どうかしましたか?」
一瞬、立場上の「父」呼びしようと思ったが、職人がいる手前、会長と呼ぶべきだと判断し、声を掛けてみるのだが…
「…いや…ちょっと気になる事があったからな…」
としか回答して貰えず、レイは更なる困惑を瞳に宿すしかなかったのだった
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