第313話:職人選定条件とサミーの交渉
先ずは選定条件を整えようと考え、手紙に使われる紙の裏を使い、箇条書きにして行く事から始めた。
「1つ目は我が家で語られた事柄を他に漏らさないと言う条件は必須だな」
「はい、そうしなければ残ってくれる職人にも失礼かと…」
父が提案し息子が考え追加の言葉や事柄を入れて行く形を取った。
「馬車を作る過程と同じなら女性の意見は不要ですわね?」
母は加わる事が難しいと考え、飲み物を用意して貰いに出るつもりで席を立とうとする。
「いえ…女性の立場から意見を頂かなければ、
ならない事もあるかと…」
彼が提案した形は、馬車を基本としているのだ、しかし、将来的に形が変わる場合、女性が乗るのに「ふさわしく無い形」であれば、流通しなくなる可能性も出て来ると踏んだ。
「まさかレイ…
その先も見据えているの?!」
「勿論ですよ。
こんな楽しい事を提案されて、
動かない馬鹿はいないでしょう?」
動かない処か話手前で投げ出した者がいるなど知らないレイ。
2つ目の条件を何にしようか…と父と話し合いを始めてしまい、居場所をなくしてしまった母は、静かに執務室から自室へと戻って行った。
* * * *
その頃、サミーは職人たちが集まる地域へ足を向けていた。
知り合った当時は、見た目が男性で中身が女性と言う形だったが、気味悪がられる事なく接してくれる変じ…げふん…変わり者な職人が、交渉相手になりえると思って声を掛けに来たのだ。
「ハンターさん…いらっしゃる?」
声を掛けた相手…道具職人ハンター。
平民だが、技術は抜群に持っているのに、変わった依頼しか受けない故に嫌われている人物でもあった。
「…おう、嬢ちゃんか。
噂には聞いていたが、美人になったなぁ」
文字を紙に写す等と言った道具を生み出したのも彼だが、道具は重宝されるも技術者として重宝されない不幸な人物でもある。
「えぇ、嬉しい事に恩恵を頂いたの。
それでね?魔法誓約書に誓って貰う形になるのだけど…
変わった道具、作りたくないかしら?」
変わった道具…と聞いた瞬間、ピクリ…と反応してしまい
「誓約書…てぇ事は門外不出な事に関わらないか?
と言う事で合ってるか?」
と問いかけていた。
「そうよ。クロフォード商会が絡むのだけれど、
売る場所はわたくしの雑貨屋。
今、流行りの品から籾殻を取り除く道具よ」
驚きに目を見開き
「誓約書を書かせて貰いたい」
と即決してしまう。
「えっ?!よ、宜しいの?
見た事も無い品ですのよ!?
それをいとも簡単に請け負うなど…
大丈夫ですの?」
彼女の心配は尤もだが、新しく知れる品が目の前にある、と言う嬉しい出来事を逃してなるものか!と思ったハンターは
「大丈夫も何も…
嬢ちゃんも知っての通り変わり者で有名だからな。
俺に依頼があっても不思議な物を作る時しか来ねぇ…
だから今回、持ち込んでくれたのは有難いんだよ」
そう断言し嬉しそうに手を差し出し、サミーが持つ誓約書に署名・
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※押捺(おうなつ)=拇印などを押すことを表します
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