第288話:喜びの雑貨屋(1)

 リョータが遠見鏡とおみきょうを購入した翌日、在庫が乏しくなったリョータはスマホで購入するのではなく、サミーの店で白米を購入するつもりで向かい始める(勿論、転移で門近くまで飛んで残りは徒歩)。


「あれから…どうなったかなぁ…」


 あのお兄さんはオネェさんの事、好きってオーラ出しまくってたのに、あの令嬢たちは気づいてなかったもんなぁ。


 そしてリョータが雑貨屋から延びる列の長さが尋常じゃ無いくらいに長くなっている状態に目が点となる。


 何、コレ…何ガ起キタノデショウカ…。


 見知った騎士が列を整理している姿を目撃し、声を掛けてみた。


「あのぉ…どうしたんです?

 昨日は此処まで酷い列じゃなかったんですけど…」


「お?リョータか。

 実はなあ、大商人で有名なクロフォード様と、

 雑貨屋のあるじが結婚する事になったらしくてな。

 その祝いを兼ねて買い物をする者が多くなっててな、

 流石に平民と爵位持ちを一緒に並ばせる訳にも出来んからなぁ…」


「あ~…納得です。

 僕も手伝おうか?」


 一応リョータは騎士見習いの立ち位置ではあるが、流石に子供を整列を整える為に使う訳にも行かず


「気持ちだけ貰っておくよ。

 流石に見習いとは言え子供を使うのは…な」


 と断られてしまう。


 そりゃそーだわ。


 俺が大人の立場なら許可は出さんよな。


「判った~。白米を買う平民は何処に並んでる?」


 リョータは列を乱す事なく並ぶつもりだった。


「あら!君ってリョータくんよね?!」


 雑貨屋から説明の為に出て来たのだろう、サミーが破顔してリョータの元へと走り寄って行き周囲の爵位持ちは「ぎょ」っとした。


「え…おねx…お姉さん?」


 一瞬、オネェと言おうとした、したのだが彼が彼女になったのは一瞬で判断できた。


 だからこそ「オネェ」ではなく「お姉」と呼んだのだ。


「ふふふ、君なら無条件で購入しに来て欲しいわ」


「えっ!?それはダメだよ!

 だって僕は平民で騎士見習いと言っても、

 なったばかりだしっ…」


 や~め~てぇ?爵位を持ってる人たちからの痛い視線…バンバン飛んで来てるんですけどぉ?!


かく、今は一緒に来てくれないかしら?」


 苦笑いの顔と変化した性別…リョータに何を言いたいのか即座に理解できた。


「判ったぁ…」


 あ~…これ、お礼を言われるパターンだろうな。


 何事かと見る爵位持ちや平民の視線が、痛い程に突き刺さりながら進む。


 リョータは、憂鬱だった。


 何が…と言えば「巻き込まれ度MAX」状態が過熱しかねない、と言う事がだ。


 雑貨屋までたどり着くと、そこには満面の笑みを浮かべたイケメンと、イケメンそっくりな年配の男女…そしてオネェさんの家族と思われる男女が、談笑している光景だった。


 え…?まさか…まさかな事態が起きた?!


 案内される前に「結婚する事になった」と言われていたにも関わらず、綺麗サッパリ忘れてしまっていたリョータは「まさかな事態が起きた」と思ってしまったのだ。


「君か…名前を教えて貰えないか?

 君の助言が今の状態を生んでくれたんだ」


「…リョータって言います…。

 一体これは・・・」


「リョータ殿、

 我がを元通りにして下さった事、

 有難く思う」


「え」


 サミーの家族からの言葉に、戸惑うしかないリョータ。


 一体なにが起きたんだ?!

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