第287話:閑話~幸福な2人

 思いが叶った2人を教会関係者たちは祝福する。


「おめでとう、2人とも。

 神様の恩恵を頂いた女性は、

 幸福な家庭を築くと言われてますのよ?」


「天使の悪戯で性別が違っていたらしいですが、

 これからは誰にも憚る事なく、

 その思いを貫く事も可能となりました」


「で、ですがっ…

 元々わたくしは男爵家の嫡男として登録を…」


「それは申請し直せば良い事ですよ。

 ここは教会…

 創造の女神様が認めて下さった…

 それだけで登録を変更するに等しくなってます」


 あれよあれよと言う間にサミーは女性として登録されるも平民として。


「サミー…君は元々、男爵だったんだね?」


「え…ええ。

 嫡男が女性の心を持っているなど、

 受け入れがたいでしょう?

 だから廃嫡されちゃって…

 平民として生活する事になったのよ」


 でも…サミーは「運命の相手」とも言える男性と出会えた。


「名乗っていなかったね。

 私の名前はレイ・クロフォード…

 クロフォード家の三男で商売人になるしか道は無くてね…」


 苦笑するも、爵位を持っていたサミーは、彼が「ただ者」では無い事くらい気付いていた。


「…家名までは気づかなかったけれど、

 爵位を持っているのだろう、とは気づいていましたわ。

 クロフォード家と言えば有名ですものね」


 一緒にはなれない…そう諦めるつもりだった。


「家は関係ないさ。

 私は私が妻にと望む女性と婚姻する。

 サミー…私レイ・クロフォードと、

 結婚して頂けますか?」


 イケメンを見初めた令嬢たちが追いかけており、その光景を目撃してしまい思わず


「「ちょっと待って下さいまし!

  男性が男性と結婚など無理に御座いますわ!」」


 と金切り声で叫んでしまった(周囲に他の目があると言う事を綺麗に忘れ…)。


「…お二方とも、ここが何処か判っておられますよね?」


 絶対零度な表情で「いきなり入って来た」令嬢を睨む教会関係者。


「えぇ、ええ!

 勿論っ!!知っておりますとも。

 ここが神聖なる教会であると言う事も、

 そこなる女性の恰好をしているのが男性である事もっ!!」


「「「「「は?!クロフォード様以外に男性はいないが?」」」」」


「え・・・く…クロフォードさまぁ?!」


「ど、ど、ど、ど、どうしっ・・・」


 何故と言いたかったのだろうが、言えず仕舞い。


 令嬢であれば「クロフォード」の名を知らない筈が無いからだ。


「貴女がたからのには気づいていましたが、

 私からすればサミーの方が魅力的で好ましく思っていました。

 なので先ほど、

 神の名の元に永遠を誓おうとした所だったのだ…が…」


 ギロり…と誓いの瞬間を邪魔したに過ぎない令嬢たちに、冷ややかな視線を送る。


「い、いくらなんでも男性同士では子は望めませんわ!」


「そう、そうですわよ!

 わたくしたち女性を選ばないなんてっっ」


「いや…サミーは女性ですぞ?」


「え?だって男性の体でしたわよ?!」


「サミー嬢…女性同士なのだから触って頂いては?」


 疑っているのが「ひしひし」と伝わっているからではあるが、目の前で奇跡を見ていなければ提案すらも難しかっただろう。


 だが、奇跡を目の当たりにしてしまった。


 ならばクロフォードと知っても尚、縁を結ぼうとする阿呆な令嬢たちに「ざまあ」を仕掛けるしかないと考え、サミーを令嬢たちの元へと向かわせ顔色を青ざめさせる事に成功したのだった

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