第286話:神の奇跡

 リョータから言われた男性は早速、昼休憩の時間帯に令嬢たちへは領地の祖母が病気の為、回復を願いに教会へ行きたいから付いて来ないで欲しいと願い、叶う。


 一方、リョータは会計時に「オネェさん、お兄さんと一緒になりたいって神様に願ってみたら?」と「こそ」っと囁き目を見開かれてしまったが、サミーも体が男性のままでは結ばれないだろうと淡い恋心を閉じ込めるつもりでいた。


 が、もし…もし願いが叶うのならば…彼と夫婦になりたい。


 女性として愛されたい…と望んでいいのだろうか?とも思うのだが、やはり目先の性別問題は願い出たとしても叶わないだろう、と思っていた(願いが叶う迄だが…)。


 令嬢たちが自宅へ戻って行くのを確認した両者は、別々の教会へ行くよりは…と同じ教会へ行き、令嬢に聞かれたとしても、サミーは雑貨屋が忙しくなった事への感謝と答えるつもりだ。


 教会へ到着すると、祈りのスペースへと2人して並び同じ事を願った。


「どうか彼と一緒になれますように」

「サミーと一緒になれますように」


 神が願いを叶えてくれた事を示す方法として知られているのは「創造の神」として像から光が望んだ者へと降り注いだ時だとされており、その現象がサミーの身に降りかかったのだ。


「「「え・・・?!か、神の恩恵っ!?」」」


「えっ…え…?!」


 みるみると「男性らしい」体格から「女性特有」の体格へと変化し、男性だった体が女性へと…サミーが望み男性が望んだとおりに変化した。


{今まで苦労して来ましたね。

 貴は本来、

 女性として生まれてくる筈でした。

 しかし性別を管理する天使の悪戯で、

 男性の体に入れられてしまっていました。

 貴女が望み、同じ思いを持つ、

 異性が望んだ時、

 わたくしからお詫びするつもりで、

 用意していました。

 ようやく叶える事が出来ますわ}


 女神の言葉はサミーにしか聞こえておらず、目頭が熱くなって行くのが判ったサミー。


 光が収まると、そこにはオネェだった髪色で美人顔な男性…ではなく、体つき「だけ」変化した美しい女性がひざまずいて頬を涙で濡らしていた。


「サッ、サミー…なの…かい?」


「えぇっ…えぇっ…神様がっ…

 わたくしの願いとっ…

 貴方様の願いが同じだった時、

 望みを叶える手配をして下さっていたとっ…

 おっしゃられてっっ」


 流石に泣き顔を見られたくないだろう、と考えた男性がフワリ…と抱きしめ、確信した…男性だった体つきが女性になった…と。


「サミー…君が好きだ…初めて出会った…

 あの時から…君を慕っていた。

 だが、

 男性だと告げられ戸惑ってしまった事を許して欲しい」


「…仕方ないわ。

 出会った時は男性の体に女性が入っているような状態でしたもの。

 その状態は女神様が言うには、

 天使の悪戯だったそうなの。

 でも…本来の姿は女性だった…戻して下さったの」


 流石に涙顔は恥ずかしいだろうと考えた男性は、サミーの体を抱き寄せ顔を胸元で隠し、確信した。


 彼だった体つきが彼女へと変化し、愛を伝えたとしても気味悪がられる関係ではなくなったと言う安堵と神様が性別を戻して下さった事への感謝をし、未来への希望が繋がった瞬間となった

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