第285話:リョータのお節介

 雰囲気は「一触即発」で他人から見れば「一目瞭然」。


 女性2名が見目の良い男性を標的にして、サミーを近寄らせないよう雰囲気でバリケードらしきモノを張っているように見えている。


 そんな状態時にリョータは店へと入って気付いたのだ。


(あれま、あからさまに男性を令嬢たちは狙ってるけど、

 男性は完全にオネェ目に入れて無さげ)


 困ったように周囲に目を向けてはいるが、午前中の販売時間を終えたのだろう、店内にいた人々が次々と外へと出て行く様子すら見え始め、品物見たさに入ったリョータは打開策を打ってあげるか、と困っている「お兄さん」のズボンをツンツン…と引っ張り下へと視線が向くよう仕向けた。


「ん…?子供…?」


 その声に気付いたオネェさんが


「あらまぁ。

 貴方が買ってくれた白米と蝋紙が売れすぎちゃって、

 困るくらいになったわぁ…

 でも、買ってくれて有難うねぇ」


 と声を掛けて売れすぎて困っている現状を教えてくれた。


「ううん、今日は扱ってるか見たい品があったから来たんだ。

 このお兄さんを借りていい?」


「え、ええ。手伝いをして下さる方だから、

 一応は何処に何があるかくらい、知ってるわ」


「ありがとー!」


 お兄さんの服をグイグイっと引っ張り


「あのね、あそこにある品が見たいんだ。

 僕を持ち上げてくれる?」


 と「わざと」女性では無理な場所にあり、持ち上げられないと見えない位置にあると気づいた男性が「はっ」とした顔になり


「ああ、持ち上げてあげよう」


 と理解をしてくれた。俺は小声で


「お兄さん、オネェさんしか見えてないのに、

 2人の女性の視線が嫌だったでしょ?」


 と確信をつくと


「…気付かれてたのか。

 だから私を指名して引き離してくれたのか」


 と困ってたから助かった…と言わんばかりの顔で答えてくれた。


「でもね、見たい品が上にあったのは間違ってないんだ」


 そう言って目線を目的の場所に向けると、男性もそちらに顔を向け


「あぁ…こんな品も扱ってるのか。

 君の名を聞いて無いから坊主と呼ぶが、

 これは航海士と呼ばれる者が使う道具で、

 遠見鏡とおみきょうと呼ばれてるんだ。

 この大きさだと、持ち運びが簡単な仕組みになってるな」


 と品の名を教えてくれた。


 へぇ…望遠鏡って呼ばず遠くを見る鏡って意味で付けられた道具か。


「そうなんだ、僕が取っていい?」


 少しでも長く、令嬢たちが関わりたいと言う「捕食者の目」で男性を見ているので、俺は逆に男性と「接し続ける事」で回避を試みてあげる。


「ああ。手に取って希望の物か確認してくれると有難い」


 彼が俺の体を品物ちかくまで持って行ってくれたおかげで、置いてある品が「望遠鏡」と遜色ない品だと確認できた。


「…希望してた物だから、このまま持ってるから降ろして下さい」


「判った」


 ゆっくりと降ろしてくれたお兄さんに「オネェさんに告白しちゃった方がいいよ?」と背中を押した。


「い、いや…いくら何でも…」


 令嬢たちがいる前で告白しようものなら「不潔」だの「気持ち悪い」だのと言われかねないって考えての事だと気付いていた。


「だったらオネェさんと一緒になりたい…って、

 神様に願い出るのは出来るんじゃない?」


 と伝えた。


 後に奇跡的な事が起きるなど思いもしてなかった

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