第284話:街に戻って雑貨屋へ…

 施設が冒険者たちにバレてしまったのだが、その冒険者たちは「夢だったのだ」と思ったようで、街での噂に上がる事は皆無だった。


 勿論、その事に気付いたのは雑貨屋で買い物をしたかったリョータが、街に戻ったから。


(おっかしいなぁ…。あれだけ騒いでたのに、

 何の噂もされてないとか…有り得んだろ)


 リョータの疑問は最もなのだが、流石に「見た事」が無い施設を「誰かに話したとして信じて貰えない」と思われてるなど気付く訳が無い。


 噂されないのであれば、噂され始めた時、偶然「見つけた」と言い張ろうかと思惑を巡らせ、オネェさんがいる雑貨屋へ向かうのだが…


「あれ?あの店まで列が何で出来てるの?!」


 と言う声が出てしまったのはご愛敬。


「お?お前さん白米を買うのなら並んだ方が良いぞ?」


「え・・・もしかしなくても、

 この列って白米を買う為の列なの?」


 青天の霹靂…どころではない。


 トンビが鷹を生む…くらいの衝撃を受けたのは仕方ない。


 何せ白米を見つけ、学校へ持って行き、侯爵家嫡男に食べたいと言われ、屋敷へ持って行って数日…たった数日しか経過してないに「これ」なのだ。


「他の品を知りたくても並ばなきゃならないのかな?」


「それはイイんじゃないか?

 この列はあくまでも白米購入と蝋紙ろうがみの列だしな」


「ろっ…蝋紙もぉ?!」


 包んで行った紙すら噂の品となっているなど、思いもしないから出た言葉。


「あ、ああ。そうだ」


「じゃあ…それ以外なら直接、聞きに…

 行ったとしてもオネェさん1人じゃ対応できないかぁ…」


「それがなぁ…かr…彼女の本質を知っても働きたい、

 と望む令嬢が手伝ってくれてるんだ」


 今さらっと…さらっとスルーしたけど、彼って言おうとしたよね?


 って事はオネェって気づかれちゃったのか。


「そうなんだ、オネェさん1人だとキツイだろうね…この人数は…

 教えてくれてありがと!」


 リョータは白米でも蝋紙でも無い為、直接、オネェさんの所へ向かう事にしたのだ。



~店内side~

「白米の方はコチラにお並び下さい。

 あらかじめ購入量がお決まりでしたら、

 その量をお渡ししますわ」


「蝋紙の方は大きさが選べますので、

 コチラから見本をご覧になり、

 希望される大きさをお選び下さい」


「他の方は店内を確認して、

 こちらでお支払い下さい」


 店内は蝋紙を購入する客、白米を購入する客、そして雑貨を見る客とごった返している。


 サミーの手伝いを買って出てくれたのは男爵令嬢や平民。


 男性であっても女性の心を判って貰えるサミーを差別する事なく、同じ女性として扱う貴重な人材が集まってくれ、サミーは嬉しくて仕方ない。


 だが、彼女たちの目的は…サミーを影ながら手伝う「見目の良い男性」であって、いわゆる「お近づきになりたい」だけなのだ。


「本当に貴女たちが来て下さって助かってますわ」


 しぐさ、言葉遣い…何もかも、女性らしいサミーを内心では気味悪がっている。


「いいえ、サミーさんが困っているのは知ってましたもの」


 と外では言い内では「何て気持ち悪い男性でしょう」だ。


「サミー…米だったか。

 それの在庫は1袋しかなくなったよ」


 彼女たちの目的でもある男性が、白米が終わった事を告げに来ると、あからさまに女性たちが嬉しそうに頬を染め、嫌な雰囲気をサミーは感じてしまった

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