第273話:温泉探索…の前に説得

 玄武から指摘を受けたからではないが、やはり自分の目で確認したいと思ったリョータはテントは張ったまま、入り口は小桜にカモフラージュで見張って貰おうと影から呼び出す。


(小桜ぁ~転移で卵が腐った匂いがする場所まで、

 見に行って来るから見張っててくれる?)


【あ~る~じぃ?

 又、何かしら良からぬ事を企んでおりますの?】


 周囲の大人たちは小桜が従魔となった犬状態で、主からの「お願い」を聞こうと「おすわり」してるように「見えている」らしく、不思議な顔をされているのにリョータは気づいてなかった。


(その卵が腐った匂いがする場所が、

 ここからも見える煙あるだろ?)


 言われて上に視線を向ければ確かに、彼方此方あちこちに見える。


【確かにありますが…それが何ですの?

 あるじが良からぬ事をしでかすキッカケになりうる場所ならば、

 行く事を許可しませんわよ?】


(そこを掘ったら温泉って言う、

 傷を癒す湯が出る可能性があるんだ)


【傷を…ですの?】


 ワンコが可愛らしく首をコテン…と傾けてる姿は見た事の無い者たちに取って、完璧な癒しとなったようで…


(リョータだったか?

 彼の従魔は可愛らしいが犬とか言う獣だろうか?)


とか


(滅茶苦茶かわいいが、種類は何だろう?)


 とか言う受け入れられた声がし始めていた。


(うん異世界にほんには、

 傷を癒したり病気を緩和させたりする温泉と呼ばれる場所があってね。

 湯の街と呼ばれる場所まであるくらいなんだ。

 で、温泉ってのに効能…ようは傷を癒すとか、

 筋肉痛を緩和するとか、

 と言ったような内容の成分が含まれてるんだ)


【もしや…ココをそこへ?】


勿論、それも考えたけど、小桜も怪我してたでしょ?


【…わた…くし…?

 確かに主に救われる直前に金物の刃に噛まれ…

 まさか…その傷が治るのですか?!】


(完全じゃないよ?

 でも薄くはなると思う。

 それに鉱山で働いてる鉱夫(※)の疲れを癒せるかも知れないんだ)


【傷だけでなく疲れを癒す温泉と言うものを探したい…

 と言う事ですのね?】


(うん。

 伝説的に語られてる神様に玄武、

 と呼ばれる亀の神様がいるんだけど、

 その方からあるって教えて頂いたんだ)


【そう言う事でしたら仕方ありませんわね。

 わたくしが見張りをしてるように見せれば宜しいのですわね?】


(うん、お願いしてもいい?)


【判りましたわ】


 尻尾フリフリ、何かを頼まれ喜んでいる…と見られているようで、見張りを買って出てくれた大人たちは目の保養…とばかりに「ほっこり」している。


 あれま、小桜が見た目、犬っぽいからか?周囲の大人が癒されてるや。


【(い、嫌ですわ。わたくし、そのように見られてますの?)】


 見られてるねぇ…撫でられる覚悟、した方がいいかも?


【(あ、主…その…主に撫でられるなら未だしも…

 見知らぬ方々からは拒否できませんの…?)】


 …それ、多分…いや確実に無理だと思う。


 だって皆、好意的に小桜を見てるし俺も好意的に受け入れて貰えたじゃん。


 小桜に取ってリョータが転移で往復する間、周囲の大人数人から撫でられてしまう覚悟をするハメとなってしまった



※=辞書に「鉱夫」と言うのは入ってませんが、

  鉱山などで働く人の事を表現する言葉として使われる事もあるそうです。

  「坑夫」と言う表現もあるとの事ですが、判りにくいと考え、

  前者を採用いたしました

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