第272話:匂いがする場所は…

 遠視のスキルを使い「卵が腐った匂い」がすると言われた方向を見ると


(あー…やっぱり硫化水素?

 って事はぁ…あるよね?温泉…)


 見えてる範囲には硫化水素どくとくの「湯気」と言うのだろうか、所謂いわゆる「湯煙」っぽいの「しか」見えてないのだが、それが温泉地域独特のモノだとリョータは思っているのだ。


(これ、もしかしなくても隠遁いんとん使ったら行く事、出来ねぇか?)


 何とも腹黒くはあるが、如何せん見た目が子供である。


 行きたいと望んだ所で採掘レベルがFでは行く事すら出来ない。


 となれば「隠れて向かう」しか方法は無い。


 ただテントの入り口は「大人たちに見守られて」いるので出る事は不可能。


 しかし「裏口」があれば不可能では…なくなる。


(どうすっかなぁ…東は青龍で水、西は白虎は風だっけ?

 南は朱雀は火だからぁ…北って亀で土…玄武?)


〔儂を呼んだか小僧〕


(へっ?!な、何で玄武様の声が異世界こっちまで届くんですか!)


〔今更であろう?稲荷神も声を届けておるでないか〕


(…そうでした。あのぉ…もしかしなくても、

 異世界こっちに温泉…あったりします?)


〔あるぞ?お主がおる場所から見えたであろう?

 あれこそ源泉の証拠ぞ。

 ぬしならば転移で行けば良いではないか〕


(あ…転移で硫化水素の場所ちかくに行けば、

 温泉を掘り当てられると言う事ですか?)


〔そう言う事ぞ。

 巻き込まれまくっておるようだが、

 もう少しの辛抱ぞ。

 主はいずれ平穏無事に暮らせるようになる故、

 しばしの我慢ぞ〕


(有難うございます。玄武様…)


 まさか伝説級の存在、玄武が返事を異世界までくれる事になろうとは思ってなかったリョータ。


 半信半疑ではあったが「転移で希望の場所に行く」と言う方法ならば、外で大人が見守っていたとしても、朝までに戻り、挨拶できれば気づかれる事なく移動できると思い始めた。


「おいリョータ?」


「あ、すみませんヘンリーさん。

 武器の一部として作るとするなら、

 何の鉱石が良いですか?」


 欲しい品があれば売っても良いと言ってくれてたな、と直前の内容を思い出し、変な事を口にしないで済んだのは内緒。


「そうだなぁ…一部ならミスリルが妥当だろうが、

 装飾として付けるなら好きな宝石で良いんじゃないか?」


「あー…確かにそうかぁ。

 うーん…大人の武器を見せて貰って考えてみるね」


「み、見せて貰えんかもしれんぞ?」


「顔見知りの武器を扱ってる人の所で、

 見せて貰えるかも知れないから聞くだけ聞いてみる!」


 そんなに有名なのか?と言う顔の人が大多数ではあったが、何せ彼は「スタンピード」で有名な子供。


 顔見知りに武器を扱う人がいても不思議は無いな…と言う意見で一致してしまう。


「そうか。なら今すぐは要らねぇか?」


「あ、だったら見本でミスリル買いたいです!」


「ミスリルを知りたいって事で合ってるか?」


「うん!」


 リョータは鉱石場でヘンリーと知り合いとなり、鉱石を格安で手に入れ、更には「温泉らしき場所」を見つける事となったのだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る