第267話:襲撃した阿呆の結末

 周囲の気配が消えた頃を見計らったかの如く、リョータのテントに入って行く阿呆…。


 テントの持ち主が「強者」で「Sランク」と知っている者、子供を守ろうと見守っている者とに分かれているが、阿呆以外は常識ある大人たちであった。


(あの馬鹿が子供のテントに入って行ったが、

 子供は大丈夫だろうか?)


(あぁ、あの子なら大丈夫だ。

 何しろスタンピードを終息させた猛者だ)


(ってぇ事は、怪我を負い逃げ出して来るのは…)


(((あの阿呆だな)))


 散々な言われ方をされる阿呆だが、採掘現場「厄介者扱い」されているのだ。


 こうなれば「子供襲撃の罪」やら「他者の持ち物を強奪しようとした罪」やら、罪状が積み重ねられ「犯罪奴隷」と言う立場に追いやられる事が決定したと言える。


 ただリョータは、その阿呆が「犯罪奴隷」に「落ちる」とは知らないまま「こてんぱん」に叩きのめすつもりで待ち構えていたのだ。



 * * * *


 リョータのベッドには1人が寝ているように施され、阿呆には「寝ている」として見えているらしく、足音を立てぬよう、細心の注意を払って近づきつつあった。


 が、リョータ本人は隠遁いんとんを使い蹴り飛ばす体制を整えているのだ。


 これさぁ…蹴り飛ばさなくても、拘束すりゃー大丈夫そうかねぇ。


 テント外にいる大人たちが、何かしら起きた時の事を考えて、待機してくれてるんだよねぇ…まあ外まで飛ばすのもアリ…か。


 何にも気づいてない阿呆が偽リョータに向け、短刀を振り下ろした瞬間、リョータが隠遁いんとんを使ったまま腹を蹴り飛ばし、その体が外へと追い出されて行った。


「うぎゃぁあああああああああっ!」


「「「うわぁ~…」」」


 飛んで出た先にあったのは人より大きな幹を携えた大木。


 その様を見ている者たちの内心は「派手に飛んだなー」であって、誰1人として、同情してないのだ。


 大木に阿呆は叩きつけられ気絶したらしく、泡を吹いている様子が伺えた。


「・・・何か凄い殺気を感じて思わず、

 蹴り飛ばしちゃったんだけど…」


 隠遁いんとんを解き、寝る直前に気付きました…とばかりな恰好で出て行ったリョータに周囲の大人が様々な事柄を教えてくれる。


「あぁ…蹴り飛ばして正解だったな」


「お前のテントに断りなく入って行った阿呆がいてな…」


「そいつが追い出された先が…」


「・・・もしかしなくても・・・

 あの大木?」


「「「そうだ」」」


「なんか御免なさい」


「いや、謝る必要は無いぞ?」


「・・・どうして?」


「あいつはな、

 この採掘場で数々の犯罪行為を行ってたんだが、

 余りにも小さすぎて罰する事が出来なくてなぁ…」


「大きい犯罪になりかけると姿をくらませてたんだよ」


「うわぁ…」


 それってさ…大人として…どうなのよ。


「お前さんが襲撃を受け、

 蹴り飛ばしてくれた事で、

 罪状的には重罪と認定されたんだ。

 だから…見れば判るが…」


 リョータが蹴り飛ばしたであろう方向に目を向けると、多くの警備兵が木の根っこでknockoutされた阿呆を動けぬよう拘束し、犯罪者のレッテルであろう道具を手首に装着。


 足には逃走防止の魔法が施されたアンクレットを装着されていた。


「もしかして…凄い罪状だったりするの?」


「あぁ…子供だから知らないんだろうが、

 アイツは犯罪奴隷として、

 光の届かぬ場所での採掘が待ってる」


 うわぁ…反省するか死ぬまで採掘させられ続けるって事?


 ざまぁ…と言うより「ご愁傷さま~」かねぇ

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