第265話:実験的スキル構築

 確認しながら「覚えた」方が良いだろうと思い、宿の窓から山の方へと視線を・・・と思っていたのだが


「すまないねぇ…もう、

 1人の余裕もなくなっちまったんだ」


 と言う声を拾ってしまい、野宿が決定してしまったと理解してしまう。


「寝るのが無理なら、食べるのも無理かなぁ?」


 食堂兼宿泊所らしいので、食事だけ出来ないだろうか、と聞いてみたのだ。


「食事は出来るわよ?」


「じゃあ物凄く少なくして貰って構わないので1人分、

 お願いします!」


 リョータの胃袋が小食な事を知ってるのは団長と元担任くらい。


 初めての場所で、大人顔負けな量を出されてしまう可能性あった。


「す、少なくと言われても…」


「僕ね、少ない量食べられないんだ」


「じゃあ…パンとスープくらいで足りるって事かい?」


「パン1個とスープは…」


 右斜め前に置かれている小さめのスープ皿を指して


「あれくらいに掬う道具1回分で大丈夫!」


 と伝えて反応を待った。


 「1杯」と口頭で伝えた場合「沢山いっぱい」と聞き間違えられる可能性があると踏み、掬う道具・・・日本風の言い方しか知らない為、そのような言い方をしたが…


「お玉1回分でいいんだね?」


 と言われ「同じ言い方だったんだ」と知る事が出来たのだ。


「うん、お願いします」


 子供1人が座れるスペースを探しながら、周囲の大人たちの持ち物を見ていた。


(採掘道具を持ってる人と剣を持ってる人に分かれてるな。

 危険な場所へ採掘しに行くのに護衛を雇った…って事で合ってるのかねぇ…。

 説明かもん!)


およそ、その解釈で間違いありません。

 ただマスターは子供ですので、

 依頼を受けたとしても、

 相手に拒否される可能性がありますよ}


(あー…その事には気づいてたから、教えてくれてありがと!)


 ブラッドさんなら拒否はされないだろうけど、中身おっさんでも見た目は子供…拒否されるのは目に見えている。


 何とか1人分の席を見つけたリョータは料理が届くまで大人しく待つことにした。



 * * * *


 1時間後…満腹になったリョータは野営すべく、宿泊出来なかった人たちの為に作られたと思われる野営地へと向かう事にした。


 結構な広さを要した場所を作ったんだなぁ…何張も設営されてるもん。


 同じ見た目のテントではあるが、それぞれ誰のテントかを把握できるよう、何かしらを入り口に垂らしているのが見える。


 タオルを掛けていたり、靴下を掛けていたり、仲間が立ってたりするのだ。


 あー…確かに、他人のテントに間違って入って、そこが女性のテントで着替え中だったらビンタもん…だもんねぇ。


 リョータはテントを設営しながら遠視のスキルを作り始めた。


 手前が一番多くの鉱石が取れ初心者でも採掘に訪れる場所で、中央にそびえる山は中堅クラスからベテランまで、最奥は危険区域が点在する場所…っと言う事は、見るとするなら最奥だな。


 先ずは望遠鏡で山を確認するかの如く、スキルを作って行くのだがこの時、スマホで道具を購入する…と言う事を思い出さず、後になってガックリと肩を落とす事になるとは思ってもなかった

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