第263話:採掘場所は…

 道具を袋に入れた状態で腰から下げ、素人でも採掘可能な山へと向かうのだが、どうみてもベテランと言えるような人すら初心者の山へと向かっているのだ。


 何だろなぁ…普通は新人しか登れない状態だろうにベテラン一緒とか…あ、もしかしてベテランに見えてるけどブランクあって、復帰する為に向かってるって事もあるのか?


 詳細は判らないがリョータのように道具が新しい者もいれば、使い込んだ道具を持つ者いる。


 色々な採掘現場へ通じる道は採掘者で溢れ混雑状態。


 迷わなくていいけどさ、混雑してるな。


 大人ばかりの行列に子供が混じってるとか…、鉱石の買取が高額なのかも知れないけど、俺と同じ世代の子供もいるもんなぁ。


 掘り出せるのは恐らくダイヤ、サファイア、アメジスト…そんな宝石ばかりとは限らない…か。


 何にしても作業の仕方を学ばないと、間違ってハンマーで手を打ち付けたりしかねん。


 よそ見は出来ないし、誰かに呼び止められたら必ず作業する手を止めないとね。


 採石場で事故る事が異世界あっちで起こった事あったもんな。


 教えてくれる人が優しいといいんだけど…。


 混雑状態の先…ベテラン組は左へ、新人や復帰者は右へと書かれた案内板が見えて来た。


 あ~同じ方向だったのは分かれ道があるからだったんだ。


 新人や復帰者が向かう右側には、受付のような簡易的な場所が設けられており、更に復帰者らしき人物は左側の空間へと移動しているようだった。


 あれ?明らかに復帰と思われる大人は、左の空間…山の入り口付近に集められてて、新人と思わしき人たちは何かしらの受付してる…?


 採掘許可証と書かれた書類を持った人が、更に別の人の元へと向かう様が見て取れた。


 なるほどなぁ…採掘許可を取った人のみが採掘できて、許可を持って無い人は勝手に採掘できない仕組みって事か。


 って事は、こっそり採掘しに来ようとしてた俺は、気づかなかったらヤバかったって事だな。


 冒険者レベルで採掘できるのならば、勝手に取りに来て鉱石を換金に回したとしても罰せられないかな…と思っていたが実際は、許可証を持った人物のみが採掘でき、鉱石を換金できる仕組みが構築されていた。


 復帰組が採掘する様子が無いのを見ていれば、冬の間は採掘できないのだと言う事を理解できる。


 雪解けが終わらなければ危険なのだろう、とリョータは肝に銘じる事にし、自分の順番が来るのを待っていた。


「次の…えらく小さな採掘者だな」


 小さなリョータに怪訝な顔を向ける採掘責任者の1人。


「冒険者なんだけど、ランクが上がっちゃって、

 採掘の依頼を受けた場合、

 対応できない可能性があったから、

 勉強したくて来たんだけど、

 子供は駄目だったんだね…ごめ

 「そ、そう言う訳じゃないんだ!」

 へ?」


「理由を知らなかったからな。

 子供が日銭を稼ぐ為に、

 危険な採掘場へ来る事も多くてなぁ…

 お前も同じだと思ってしまったんだ」


 怪訝な顔をされた理由を知る事が出来たリョータは、春休みが来たら道具の扱い方を伝授する、と言う事で受け付けて貰う事が出来たのだった。


 まさか、この先…あんな事が起きる事など知る由も無い

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