第261話:廃村に向けて出立

 詳細に記されている地図をボックスに収納し、鉱山に必要な道具類を扱っているであろう村へ向かう事にした。


 今の季節に採掘する人は皆無だろうけど、道具を買いに行く人はいるかな?


 いなかったとしても、学校に通っているであろう年齢の人物が、購入しに来たとしても疑われやしない…よね?


 疑いの目を向けられたら学校があるから、休み中じゃないと来れなかった…とでも言ってみるか。


 小桜を影から呼び出し、鉱山がある村へと通じる街道方面へと向かって行く。


あるじ、鉱山のある村へ向かうのに、

 門を通過しないのですか?】


 それが…その街道、地図じゃ門を通過しない場所を示してるんだよ。


【どう言う事ですの?】


 異世界あっち風に言うと旧街道って場所らしいんだよね、門番が守る必要の無い場所で冒険者なら行き来が自由らしい。


【何て事…。

 そんなに見捨てられてしまった村だと言うのですの?!】


 判らないけど、そうかも知れないね。


 ギルドで聞いた話だと、その村は原因不明の病気が蔓延して、救う手立ては無く、病気が発覚して無い人以外を村に残し、焼き払うしか方法が、無かったらしいからね。


 流石にさ、村だった場所が不名誉な事で有名になり、人が訪問しなくなるより、焼き払って土地を再生させた可能性ってあるよね?


 それから年月を経て鉱山拠点として作り替えた…って所じゃないかなと思う。


【では当時の住民と言う方々と言うのでしょうか…

 その人族たちは…】


 生存してないそうだよ。


 勿論、健康だった人々は逃げて無事だったんだけど、年月が経過して再び発症したらしいよ。


【それは何とも言えませんわね】


 異世界あっち風に言えば多分、ウイルスが蔓延したんじゃないかと思うけどね、流石に当時の事を知る術って無いでしょ?


【そうですわね】


 鉱山の採掘の為に道具が必要となり、職人さんが生まれ、生活圏が必要となり、忘れられた村が活用された…そんな事、言われたとして、何とも返事のしようがないよね。


 冒険者って職業て言うか存在が生まれなければ、鉱山で鉱石を採掘・・・なんて考えも出なかったかも知れないもん。


 村の生き残りがいたとして、救えなかった後悔より冒険者の力になれる村となった事を喜んでるんじゃないかな。


 俺のいた世界でも村がダムという水の底に沈まなくてはならない…何て事も多かった。


 それでも村があったって記録は残るし、神様を祀る神社を移動させて移住先となった地を守って貰って…。


 リョータは稲荷神の事を思い出してしまった。


 当時、幼児で発言力は皆無に等しかったが声を大にして反対した記憶が蘇り、顔色が青くしんみりとしてしまった。


【主はニホンでしたか、

 そちらで体験されているのですわね】


 小桜の呟きは届く事は無かったがリョータは異世界こちら日本あっちの野菜などを口に出来る喜びを味わおう、と深く深く思ったのだった

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