第249話:出発

 フェルナンデス家からの迎えが騎士寮ちかくに寄越される、とされた当日リョータは、自宅から学校へ向かう前に最近、影に入って貰ってばかりいた小桜たちを影から呼び出し


「これから出かけるけど、

 皆は森の中で遊ぶか室内でのんびりしたい?」


 と聞いてみれば待機組が琥珀、ココ、こむぎ、ゴマ、権太で一緒に行動したいと言ったのは、小桜。


 不可視の魔法と壊れない魔法を施した自宅は、S級の魔物が来たとしても回避できる代物と化してるようだった(理由?俺は何でか知らないよ?!)。


 学校から持ち帰った荷物を2階へ持って行った時に「錬金部屋」が「出来てる」と言うのを知った時は目が点になったのは内緒。


 家畜の餌として売られていた品をマジックバッグに1袋(約10キロ)を入れて小桜と共に自宅に「誰も入らないよう」施した状態で出発した。



 * * * *


 ほどなくして学校(ただし騎士寮の近く)に到着すると、学生が誰もいないのが判っている為、ルーカス家から派遣されたであろう馬車は直ぐに理解できた。


 うわぁ…流石、侯爵家…家紋付きは知ってたけど、ラノベで表現される馬車そのものだ。


 御者が俺の姿を見つけ


「騎士科に途中編入した、

 元魔法科学生リョータ殿でしょうか?」


 と声を掛けて来たので


「はい、そうです」


 と回答。平民であっても招待客、ルーカス邸まで案内を怠る事は無かった。


「ルーカス様からご案内するよう申し付けられました御者で御座います、

 どうぞお乗り下さいませ」


 馬車でルーカス家へと向かう道すがら、街を見学。


 色々忙しくて街を散策…なーんて出来なかったもんなぁ…だから雑貨屋に白米があるって知らなかったし蝋紙ろうがみも扱ってるって知らなかったもん。


 勿論、冒険者登録の時に立ち寄った場所はマップ登録されているが、その他の詳細は皆無と言って良いだろう。


 まあ冬休みに入ったし、冒険者として動けば街での依頼もあるだろうから、その時にでもマップ埋めますか。


 馬車に乗って約30分…爵位持ちが住まうエリアの中心部、そこにルーカス邸があるらしく、魔法で門扉が開き中へと入って行った事で、到着したのだと理解できた。


 流石は侯爵子息の自宅だねぇ…小説がコミカライズ化されて表現される屋敷っぽいもん。


 異世界あっちで「ざまぁ」系ばかり読んではいたけど、コミカライズされた小説は少ない。


 それでも知識としては持ってる方であろう。


「お疲れ様で御座います。

 ルーカス様がお待ちですので中へどうぞ」


「・・・ありがとうございます」


 屋敷の中からルーカス様が執事らしき人物と共に出て来る姿が見えるんだけど、何で両親らしき人までが出迎えてんの?


 もしかしなくても…料理人さんが「べた褒めした品を食したい」なーんて思って待ち遠しくて迎えに来たとか言わんよね…ね!?


 嫌な予感がしてるリョータではあるが、頼まれていた事柄を実行しなければならず、逃げ場がない状態で、内心ガックリと首を垂れ、盛大な溜息を吐き出したのだった

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