第248話:準備万端整えて…

 一方のリョータは、寮に置いていた本やノートとして使っている紙片をエコに入れて行き、使わなかったかの如く綺麗にして引き払っていた。


 折角、魔法を覚えられると思って入学したのになー…まさか絡まれて注目を浴び、勉強できなくなるとは思わんかったな。


 勉強に役立つだろうと踏んで購入した本、休日にでも読もうと思って買って来た本、更には自分で作った薬草の冊子などをエコに入れ部屋に清潔魔法クリーンを掛け入学時と変わらぬ姿となった。


「あらあら、

 他の生徒から注目を浴びてしまったのね?」


 そう声を掛けてくれたのは、見学の時と入学の時に案内してくれた先生だ。


「あ、先生でしたか…」


「魔法に適性があったのに残念ねぇ…」


「大丈夫だよ?

 僕、って言われてるもん!」


 驚いた顔をしたものの、そこは流石の先生。


 声に出す事はしなかった。


「・・・じゃあ今は騎士かしら?」


 などと表の声は伝えているが内なる声は


(何て事!過去に召喚されたと同じとは…

 偶然なのかしら)


 で、その声すらリョータは聞こえており


(あれ?もしかして俺が予測した武将って、

 全ての職業に適してたの?!)


 と思った。


「うん、冒険者として活動をしてるんだけど、

 剣術を覚えてなかったから、

 活動中は無意識だったんだよ」


 何も知らない先生の前で流石に「転生して来て落とされたから学ぶ暇が無かった」なんて言える訳が無い。


 そうなれば、おのずと記憶喪失を徹底するしかないのだ。


 そんな会話が成されている所に魔法便が届けられる。


            ポン♪


「あれ?魔法便・・・?」


「あらリョータ殿ってなってるから、

 君ね?」


「はい。

 多分ルーカス様からだと思います」


 騎士団長とルーカスがリョータに「何かを願い出ていた」事は周知の沙汰ではあった。


 だからこそ、手紙が届けられても不思議がられる心配はない。


「じゃあ有意義な冬休みを過ごしてね」


「ありがとうございます!」


 魔法便で届けられた手紙を手にリョータは寮を後にした。


 * * * *


 開封すると以下の内容が書かれていた。


~~~~~~~~~~

   リョータ殿


  フェルナンデス家の料理人が

 試食した所、

 驚き即決で教えて欲しいと望んだので

 1週間後の午前11時頃、

 騎士寮の入り口で待っていてくれないだろうか?

 我が家から馬車を出させて貰うので

 それにて訪問して欲しい。

 三角の形以外にも

 作れる品があれば知りたいと言っているので

 教えて貰えるのなら是非、

 頼みたい。


          ルーカス・フェルナンデス

~~~~~~~~~~


「家族の許可も取った…って事か。

 すげぇな」


 殆どの生徒が学校から自宅へ戻っている為、誰もいない空間での独り言。


 そうなると10キロの米袋を持って行った方が良いかも知れないな、と考え、あの時に自分用に持ち帰った家畜の餌を使う事にし、追加をオネェさんの雑貨屋で購入しないとなー…と白目になりつつ、店舗がある方向へと足を向け追加購入したのだった

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