第243話:不運な冒険者たち

 偶然、森の奥地に入り込んでしまったパーティが1組。


 迷い込んだ先にいたのが「珍しいユニコーン」と「キツネザル」で、理由は判らずとも育ててるように見え、これ幸いとばかりに捕獲しようと2匹を囲んでいた。


(何でこんな所にユニコーンがいるかは不明だが、

 これはオークションに売りだせば高く売れるな)


(そうだね~…しかもキツネザルの赤ん坊?

 そいつも一緒に売れば遊んで暮らせそうだよ~)


(お前は子ザルを頼む。俺はユニコーンの捕獲を・・・)


 狙う、と言おうとした瞬間、危険度が一気に上がった気配に4名の冒険者は動けなくなった。


「なっ?!」


 思わず声が出てしまったのはリーダー格の男。


 ユニコーンと子ザルの前にフェンリルが牙をむき出し、今にも襲い掛かろうと狙いを定めている光景が飛び込んで来たからだ。


(な、何でフェンリルがいるんだよ!)


(知らないよぉ!

 ユニコーンとかを捕食するなら判るけどぉ、

 僕らを見て無い?!)


 ジワリ、ジワリとパーティが潜む草陰に近づくフェンリル。


 ユニコーンが子ザルを背に乗せ、湖の対岸へと逃げて行くのが見え「あぁ。金づるがぁ」と情けない声が出てしまう。


「と、かくズラかるぞ!」


 脱兎の如く逃げようとする男たちの足が、次々と何かに傷つけられて行き、その場に倒れ込んで行く。


「いてっ」「痛い痛い」「何で切った?!」「判らんっ」


様々な声が飛び交い、怪我を確認する彼らの目は、信じられないものを見るかの如く点と化していた。


「・・・ナイフなんて無かったよな?」


「ある訳ないじゃん…」


「だったらコレは…」


「有り得ない…」


 小型のナイフで切られたかのような傷が「ふくらはぎ」についているのだ。


 その傷をつけたのは言うまでもなく、リョータである。


 自宅から窓越しに彼らへ向け「鎌鼬かまいたち(極小)」の魔法を放ったのだ。


 フェンリルが魔法を放った・・・と思ってしまった彼らは、怪我をポーションで簡単に癒すと脱兎の如く逃げて行き、ユニコーンと子ザルは連れ去られる事をまぬかれたのだ。


「奴らはオークションにココたちを売るつもりだったんだな?」


{そうみたいです。

 気付いた時、小声で会話するのが聞こえ、

 私だけでなく、

 ココも売ろうと考えているようでした}


「気付いて良かったよ。

 ココと家族として接する前に離れ離れになる所だったし、

 こむぎと一緒に戦う事なく、

 離れなきゃならなかったんだもんな」


{ご主人様…}


(あ、兄よび・・・止めたんだね<ちょっとだけショック>)


 逃げ出した冒険者たちは二度と、欲望丸出しで森に分け入る事なく、まじめに依頼をこなすようになったそうな。


 ただ「フェンリル討伐」は、依頼が貼ってあっても手にしなかったそうだ

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