第241話:侯爵家の事情、リョータの買い物

 ルーカスは屋敷に休みを使って戻り、料理長と執事と親に学園で見かけた食べ物を取り入れたい事を説明する事にした。


「父上…」


「学園の休みでは無いのか?」


「ええ。

 実は学園の生徒で食が細く、

 団長殿から許諾を貰い弁当を持参する者がおりまして、

 その者が持って来た食事を食べてみたいと、

 願った次第なのですが、

 如何いかんせん、品が…その…」


「言いにくい食材なら料理長に直接、

 打診してみなさい」


「・・・はい・・・」


 許可を貰えないだろうな、と思いつつも料理長がいる台所へと向かったルーカス。


(流石に家畜の餌として売られている品が、美味そうだったから食してみたい、などと言って許諾を貰えるとは思えないが…)


 99%許諾を貰えないと踏んではいるが、聞かなければ先に進まない。


「料理長」


「おかえりなさいませ坊ちゃま」


「その”坊ちゃま”は止めてくれと言ってるだろう?

 実は作り方を覚えて貰いたい品があるのだが、

 教える者を連れて来たとして学びたいと思うかい?」


「材料によりますね」


「・・・見た目は白く柔らかそうだったのだが、

 元が家畜の餌として売られていた品…」


「却下させて下せぇ。

 いくらルーカス様の願いとて、

 それだけは勘弁して貰いたいですぞ」


「・・・だよね。

 もし見本を見せたとしても、

 許可が下りる事は無いかな?」


「そんなに見た目が変わるのですかい?」


「うん…とても元が家畜の餌だったとは思えない程、

 ホカホカと湯気が立っていて、

 柔らかそうに食していたよ」


「・・・妥協案で出来上がりの品を試食できませんか?」


「次回、帰宅する際に貰って来るから食べてみてくれるか?」


「料理人として気になりますんでね」


 何とか試食してくれると言う気になってくれて、内心は安心したルーカス。


 リョータに試食用に1個、作ってくれるよう頼まなければと、自分の部屋で魔法便をしたためる事にしたのだ。


 一方のリョータは団長の為に買う物を揃えるべく、オネェさんがいる雑貨屋を訪れていた。



 * * * *


「こんにちわー!」


「あらぁ…又、白米を買ってくれるのかしらぁ?」


「ううん、

 今日は蝋紙ろうがみと…

 これくらいの品を入れる箱を買いに来たの」


「蝋紙は大きさが選べるのだけどぉ、

 どれくらいにするの?」


「見本みせて下さい!」


 大きさ選べるんだったら握り飯1個分を測れば判る…か。


 先に見せて貰ったのは蝋紙。


 折り紙サイズからA4まで揃っているっぽいな。


 んと…確か折り紙が15×15だった筈。


 となると握り飯が平均的高さが7cmくらい?


 横も7くらいだから7が10個…70×70…って事はA6(105mm×148mm)が妥当?


 異世界に「物差し」なーんて無いとは思ったが、洋服を作るのに「メジャー」つかってるなら「メモリ」と言う概念あるよね。


「オネェさん縦が10.5センチ横が14.8センチの大きさって…

 どれ?」


 教えて貰って蝋紙と握り飯10個が入る大きさの箱を手に入れたリョータ。


 ヒャッキンのお世話にならなきゃな、と内心で溜息を吐き出したのは言うまでもないだろう

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