第240話:職人登録

 登録口まで行き、登録者たちの最後尾に並んでおく。


 流石に子供の登録者はいない…か。


 って事はぁ、嫌な予感しかしねーぞ(何せ絡まれ易さ抜群だし)。


「次の方どうぞ」


 俺の1人前まで絡まれる事なく進み、一瞬だけ気を抜いてしまった。


 何も絡まれないとか有り得ないんだけど…。


「・・・ガキの癖に職人になろうなって、

 10年早いぞ」


「(うわぁ…気を抜いた途端、これかい)…

 なったら駄目ってルールに書かれてるの?」


 商人には商人のルールがある・・・と言う事くらい周知の沙汰であるからして、絡んで来た「大人げない」阿呆は白い目で見られていた。


「書かれてねぇがオレ様がルールだ!」


「「「そんな訳ねーだろ、阿呆が」」」


 先輩商人や先輩職人から一斉に「お前がルールな訳ないだろう」と言われちゃー、それ以上なにも言えなくなり、そそくさと逃げて行った。


「坊主、何かしら作るから登録に来たんだろ?」


「うん…作る、と言うより、

 作りたいから登録したいと思ったんだ」


「何を作るかによって部門が違うが、

 登録さえしておけば、

 阿呆な奴に絡まれる事は無くなるから安心していいぞ?」


「そうなんだ、ありがとー!」


 受付のお姉さんも周囲の「常識ある大人」たちに守られた俺に注目はしていたが、業務を疎かにせず、俺が申し込むまで口を出さなかった。


 まあ当然だよな~。


 職員さんが口、出したりしたら「そいつだけ贔屓するつもりか!?」とか、難癖つける阿呆もいるだろうからねー。


「ようこそ商業ギルドへ、登録ですね」


「はい、ポーション作りたいと思ってるので、

 登録おねがいします!」


 錬金と言わなかったのには訳があった。


 部門に錬金と言う職が「なかった場合」を考慮しただけ。


「冒険者に錬金までするのね、

 判ったわギルドカード作るわね」


「あれ?

 もしかしなくても冒険者と商業、

 カードって別々なの?」


「ええ、そうよ。

 冒険者カードに錬金が出来ると書いてあっても、

 レベルが上がる事は無いわ。

 職人として登録し、

 商業ギルドのカードに登録する事で、

 レベルが上がって行く仕組みなのよ」


「へぇ…そうなんだ。

 でも冒険者カードで何を・・・

 あ、身分証明?」


「それもあるのだけども、

 名前や年齢それに称号や職業を書いて貰うより、

 冒険者カード情報から貰った方が早いでしょ?」


「う、うん・・・」


 大丈夫…とは思うが、Sランクって見えたりしたら固まらない?


 リョータは恐る恐るカードを受付嬢に手渡し、商業ギルドカードに必要事項がコピーされて行く様を見ていた。


 受付嬢が「10歳の子供が冒険者ランクS」と言う事実に「固まる事」はなかった。


 何故なら、ランクまでは見えない仕様だったらしい。


「お待たせしました。

 これで今日から職人としても活動して頂ける事となります。

 冒険者ギルドで薬草などを提出なさった場合、

 此方こちらの価格より安くなっておりますので、

 個人的に採取なさってるのであれば、

 商業ギルドへ持って来て下さいね。

 高額で買い取らせて貰います」


「判りました」


 これでリョータは冒険者であり職人となったのである。が、この時、薬草の価格が冒険者ギルドの方だと「安くなる」と聞かされている事に気付いていなかった

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