第222話:魔物の報告

 他の騎士に連れて行かれる形でヨセフは執務室から出て行った。


「何て事をしでかしてしまったんだろうな」


 呆れた声音を吐き出した団長。


「こうなりますと、

 本格的に選定の儀を正す方向へ、

 話を持って行かなければなりませんね」


「選定の儀ではなく、

 それぞれの適正試験を実施した方が良いかも知れぬな」


「えぇ…。

 それはそうと浅い位置で出た魔物は何だったのです?」


「その報告をすべきだったのに、

 ヨセフの暴走で話が出来る状態ではなかったな。

 スライムの生息地に現れたのは、

 ブラックベア1頭とレッドウルフの群れだ」


「何ですって?!

 領地近くの浅い場所だと言うのに、

 Aランクの魔物が現れたと言うのですか!」


 やっぱり生息地は森の奥だった…って事か。


 あ・・・もしかして…ジャーチが移動し始めた事を察知して、逃げ出したのが今頃って事ないかね?


「ああ。

 スライム討伐をF~Bまでクラス別で実行したんだがな、

 Fは5人、EとDが2名ずつ、CとBとDが1人

 対応できた者は、いなかったんだ」


「・・・情けない・・・」


「怪我人が大勢になって、

 治療していたんだがな、

 リョータが強い魔物が近づいてると、

 指摘してくれたんだが、

 距離が判らなくてな。

 F~Bには応援を呼びに戻って貰ったって所だ」


「騎士以下だと言われたのに、

 よく報告してくれたと思いますね。

 恐らく多数決で反旗を翻す馬鹿は、

 負けたと言う所でしょうね」


「だろうな。

 残ったAとSが、

 リョータと私やヨセフを囲むように、

 臨戦態勢を整え、

 魔物の到来を待ち構え、

 20匹ものレッドウルフと、

 1頭のブラックベアだと判明した。

 だが…そこでヨセフが、

 リョータを中心から外へと押し出してしまった」


「馬鹿な事を・・・」


 それさ?スタンピードをから言える言葉だよね?


 目撃どころか参加すら「してなかったら」判らないよね?


 あの言い方なら見て無い可能性あるね。


 聞いてみっか。


「団長さん、ヨセフ元副団長さんは、

 王都での出来事を見てたの?」


「「あ・・・」」


 2人同時に「見ていないな」って顔になったね。


 そりゃー見てなきゃ「押し出してでも生徒を守ろう」って気になるのも頷けるよねー。


「ヨセフは実家へ帰っていたな。

 王都での出来事すら知らない」


「例え知らずとも王都で起きた事柄は、

 名前が伏せられてはいたが、

 知る事は出来た筈。

 それなのに知ろうとは思わず、

 10歳の子供を押し出しては駄目ですね」


 確かにそうか。


 守るべき対象者が10歳で「強い」と噂されてたとしても「囮」に使っちゃぁヤバいよね。


「話を戻すが、

 押し出されたリョータは言わずもがな、

 一瞬で間合いを詰め20匹のウルフを次々たおして行き、

 あっという間にベアが来る方向へと向かった」


 流石ですね…って言ってるけど、ヨセフさんだっけ?


 ソイツが呆けたのは…ああ、言わなくても判るって事か

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