第214話:波乱の討伐(1)

 元同級生に絡まれた翌日、騎士見習い全員参加の討伐が組まれた。


 勿論、Fの生徒(入学したてで、それ程、力量が無い者たち)は後衛。


 D(そこそこ実力がある者たち)はFの周囲を守りBからS(それなりに1人で対応できるレベルの者たち)は、積極的に敵と戦う事が決められている(らしい)。


 当然っちゃー当然だわな。


 剣を持ったばかりの生徒を前衛にしちゃえば、総崩れ間違いナシ。


 それを避ける意味も込めてんだろうな、とは思うが何故か俺が注目されてんだが…せぬ。


「お前たち…どうしてリョータを見てるんだ?」


  団長が注目している理由を尋ねたのだが、案の定な回答が成される。


「「「Aクラスの猛者で、

   冒険者の彼を見習えば強くなると思って…」」」


 ・・・これさぁ…魔法の方言われた台詞じゃね?


 まさか此処でも言われると思わんかったが…。


「・・・ほぉ…。

 そこまで手抜きをしたいと言うのか?」


 見習えば強くなる…と勘違いしている阿呆と、リョータを見ていれば強くなれると考えている阿呆たちに対し、団長がピンポイントで殺気を当てた。


 うわぁ~…自業自得とは言え、殺気をまともに食らって大丈夫かねぇ(得はないけど)。


「そ、その…

 手抜きと言うつもりはっっ」


「明かに手を抜きたい気持ち、

 見えてるんだが?」


「・・・・・・」


 ガクブルと体を震わせるFクラスの阿呆たちと、今にもチビりそうなDクラスの阿呆ども。


 上級クラスの面々は「殺気を感じても平気な顔」をしてるのを見て、更に驚きの表情をしたFクラスの連中。


「リョータを真似たとして強くなるとは限らないんだぞ?

 努力し実力をつけなければ、

 冒険者として戦ったとしても魔物に負け、

 騎士として戦った場合でも、

 警護対象者を傷つけてしまう可能性が出る。

 それをお前たちは望んでいるのだな?

 ならば一番弱い、スライムを倒して見せろ」


 ガーン…と言う効果音と言うか、漫画で言う所の描き文字だっけ?が似合いそうな顔つきになり「どうして初心者が討伐しなきゃならないんだ」と言う顔になっている。


 なーんかデジャヴ感が否めないが…あの時はホーンラビットを討伐させたんだっけか。


  魔法クラスでも同じような事柄が起きた事を懐かしく思い出し、苦笑を浮かべてしまう。


 Fクラスの阿呆どもは、団長監視の元、最弱と言われるスライムを討伐したのだが、まともに対応できたのは30名中5名と情けない結果となってしまう。


 あちゃ~…半分くらいは残らなきゃでしょ?


 団長さん、盛大に溜息はき出そうとしてるもん。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 そんなに吐き出したら幸せ逃げてくよ?


「団長…」


 副団長は心配そうに顔を覗き込む。


「やはり選定の儀を見直して貰わねばならなそうだな」


「ええ。この結果を見てしまえば…」


 攻撃される事は無い筈なのだが、Fクラス25名の生徒は、木に腕を打ち付けてしまったり、枝で掠っただけで痛いと喚いたり、仕舞にはスライムに剣すら当たってない者までいたりしたのだ。


 確かにねぇ…選定の儀って素質がある、と言われてる筈なんだけどぉ、これで素質があったとは言い切れないもんね。


 見ただけで痛そうだけど、努力を怠った事が原因だろうから「ざまを見ろ」だな

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